第12話 さびれた農村

 ガタガタと揺れる馬車のせいで痛む腰をさすりながら、マエルは父から与えられた領主邸の前に降り立った。


「こちらがマエル様のお屋敷でございます」


 石壁に茅葺き屋根、そこそこ大きいが王都の屋敷に比べると粗末な小屋にしか見えない。

 それが領主の屋敷だと御者は言う。


「では、あっしはこれで」


 マエルの唯一の荷物であるトランクを屋敷の門前に降ろすと、御者はそそくさと帰ってしまった。

 ガタゴト音をたてて去っていく馬車を見送った後、マエルは周囲を見回す。

 広大な麦畑の間に、粗末な家がいくつか建っている。

 領主邸の隣にも、小さな家があった。


(後で隣の住民に会いに行ってみよう)


 そう思いつつ、マエルはトランクを引きずりながら新居の玄関へと歩いていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る