第9話 老猫の旅立ち

 年月は過ぎていく。

 トラは老猫となり、ウトウト居眠りすることが多くなった。

 眠る場所はずっと変わらず。

 空き家となったおじいさんの家の縁側で丸くなっている。


「トラは、やっぱりそこが好きなんだなぁ」

「ゴハンは食べに来るけど、寝るのはそこなのねぇ」


 隣家の夫婦に見守られながら、トラは穏やかな余生を過ごす。

 ネズミは、トラの血をひく猫たちが退治している。

 この村では猫はありがたい存在となり、猫神様を祀る祠も作られた。


「トラ、今までありがとう」

「どうか、安らかに眠っておくれ」

「天国で、吾作じいさんによろしくな」


 この村に現れてから二十年近く経った頃。

 遂に命の終わりがきて、トラは虹の橋のたもとへと旅立っていった。

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