第8話 農村を守る猫

「トラがいると納屋や畑がネズミに荒らされないから、このまま置いといてくれよ」

「ゴハンは私たちがあげるから大丈夫よ」


 ペット禁止アパートに住む娘夫婦に代わり、餌やりを引き受けるのは隣家の夫婦。

 トラは臭いを感じ取ると他家の納屋や畑のネズミも退治していたので、農村では喜ばれる存在だった。


 主を亡くしたトラは、その後も村内のネズミを狩り続けた。

 秋になれば屋根に上り、一面に広がる稲穂を誇らしそうに見下ろす。

 金色の稲穂は、毎年豊かに実り続けた。

 それは、トラがネズミだけでなく、イナゴも退治していたからである。


「トラは偉いのう」


 心の中に、懐かしい声が響く。

 吾作はもういないけれど、村人たちが褒めてくれる。

 村人たちにとって、トラは納屋や畑の守り神のような存在になった。

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