第7話 残された猫
救急車で病院へ運ばれた吾作は、そのまま帰らぬ人となってしまった。
「猫ちゃん、どうしようか?」
「うちのアパートはペット禁止だからなぁ」
吾作の娘夫婦は、遺体の傍らに座っている猫を見て言う。
トラは吾作が目を覚ますと信じて、通夜の間ずっと枕元に座っていた。
「にゃあー、にゃーん(起きて、朝だよ)」
呼びかけるトラの言葉は、人々には分からない。
けれど、その悲しみは、通夜に来ていたみんなの心に伝わり涙を誘った。
翌朝。
棺に納められて霊柩車に運ばれていく吾作を、トラは鳴きながら追いかける。
「にゃあぁっ! にゃおぅっ!(嫌だ! 連れていかないで!)」
けれど無情にも、車はどんどん離れていく。
猫の速度では自動車に追い付けず、泣き叫びながら走り続けたトラは霊柩車を見失った。
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