第6話 幸せな年月の後に

「トラは凄いのぅ、お前さんがいればネズミどもは手も足も出んぞ」


 吾作はいつもトラを褒めてくれた。

 トラは畑や納屋でネズミを仕留めると、必ず吾作に見せに行く。

 その度に吾作は喜んで、頭を撫でてくれた。


 老人と猫の、のどかな田舎暮らし。

 ずっと続くかに思われた日々は、ある日突然に終わってしまった。


 その日、吾作はいつものように農作業に出た。

 トラは家や納屋のパトロールをした後、田畑の野ネズミを狩りに行った。

 そこで目にしたのは、畦道で倒れている吾作と、必死で応急処置をする村人たち。

 その後、救急車に運ばれていく吾作を、トラは不安そうに見送っていた。

 

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