第4話 なんとなく寄り添う

 月日は流れ、夏が終わり、秋になる頃。

 トラは吾作を見ても、威嚇したり逃げたりしなくなった。


「いつもありがとうな。これはお礼じゃよ」


 吾作は穏やかな声で話しかけながら、カリカリと水を置く。

 トラは咥えてきたネズミを吾作の前に置き、躊躇いなくカリカリを食べる。


 収穫のときがきた。

 金色の稲穂が広がり、風に揺れて波打つ。


 稲刈りに励む老人の背中を、畦道に座る茶トラ猫が見つめている。

 この頃のトラは、吾作にすり寄ったり後をついて歩くようになっていた。

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