第2話 警戒心の強い野良猫

 トラは、のどかな農村にふらりと現れた野良猫だった。

 来たばかりの頃は荒んでいて、人の姿を見ると「シャーッ」と威嚇していた。

 近寄ろうとせず走り去るような猫に、餌をあげる人はいない。

 トラは自給自足のため、農家の納屋に忍び込み、ネズミを狩って暮らしていた。


 いつものように農家の納屋に忍び込んでネズミを捕らえたトラは、納屋の片隅にお茶碗とお椀が置かれていることに気づいた。

 覗いてみると、お茶碗には魚に似た匂いがする粒々が、お椀には綺麗な水が入っている。


(こんなところに食べ物と水を置くなんて、食べられても知らないぞ。ネズミに食べられる前に、食べてしまおう)


 そう思ったトラは、お茶碗に入ったカリカリをペロリと平らげた。

 代わりに、仕留めたネズミを1匹、お茶碗の前に置いて帰った。

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