第7話 書店めぐりとお寺へお供え

 在庫が少なくなり、重版がかかった本は、その前に同僚が近所の書店やネット通販で買ってくれていた。


 そこでお願いされたのが、初めての「サイン」。

 もちろん、これまでの生涯で書いたことなどなかったので、いろいろデザインを考えたものの、最初の頃は余白の多い、いまいち寂しいデザインとなった。


 サインするときはちょっと照れるし、恥ずかしい。

 まあ、同僚なので、冷やかし半分というか、お祝いもかねて、というものだったのだろうけど、素直に嬉しかった。


 そのうちに本名のアルファベットも追加するようになって、余白も埋まり、


「うまくなってきている」


 と言われて、それも嬉しかった。


 また、田舎の実家に帰った際、両親にも一冊、「献本」した。

 ちょっと微妙な表紙だったけど、中身は純愛ものだったので、読んでくれた。

 内容については、ほめてくれる部分があると同時に、なぜか上から目線でダメだしされたけど。


 さらに、実家の近所の本屋 (田舎なので顔なじみ)に、僕が書いた本が文学賞を受賞、出版されたことを告げると、取り寄せて置いてくれることになった。


 後日その店に行ってみると、本が数冊積まれた上に、実名が大きく張り出されていてちょっと焦った。

 まあ、田舎だしいいかな、と考えて、許可を取って記念に写真を撮った。


 すると、田舎であるがゆえに噂が広まり、近所のおばちゃんからガソリンスタンドのお兄さんまで、いろんな人が買ってくれて、入荷即完売の状態がしばらく続いたらしい。

 もちろん嬉しかったけど、正直、地元に帰りづらくなった気がした。


 そしてしばらく経過し、ようやく重版分が書店に並び始めた。

 早速、例の今住んでいる近所の書店の特設コーナーに行ってみると……棚の上段を占拠するように、数十冊並べられているではないか!


 唖然としてその様子を見つめる自分。

 なんか、ちょっと申し訳ないような気持にもなったけど、一番衝撃的で、夢見心地になった瞬間だった。


 その後、休日に在住地 (県内)の書籍系列全店を丸一日かけて車で一気に回ったのだけど、どこも「県内出身作家デビュー作」というPOPを飾って特設コーナーを作ってくれていて、本当にありがたかったし、その行動自体が、宝探しの冒険みたいですごく興奮、感動したことをはっきりと覚えている。


 会社の同僚からも、


「買って読んだよ」


 というメールや声掛けが続いて、改めて出版のインパクトってすごいんだな、と実感した。


 なお、おまけだが、実家に帰った理由は法事があったからで、そこの住職さんとの世間話で作家デビューしたことを告げると、それはぜひお供えしてご先祖様に報告すべきだ、という話になって、あの表紙の本が、一時的とはいえお寺に飾られることになったのだった。

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