縁起
その日は元日で、私は初詣のために近所の小さな神社に行っていました。
神社は同じように初詣に来た人たちでお賽銭箱に続く列ができていて、私はその列の後ろに加わりました。
列が進んで私の前の人にお賽銭をいれる順番が回ってきたとき、
お賽銭箱に小銭を入れたにしては不自然なほどに大きな音がしました。
私の前の、その老人は小銭を大量に入れた袋をひっくり返してそれに投入していたのです。
その小銭にはお札も数枚混ざっていました。
そして妙に長い礼をすませ、老人は列を外れて去っていきました。
その老人の身なりは浮浪者のようで妙に印象に残ったのを覚えています。
そして私はお賽銭を済ませた後、お札を買うために売店に寄ったのですが。
そこに例の老人がいました。
その老人は大小さまざまなサイズのお札を何十枚も、そして封魔矢を何十本も購入して
「これでだいじょうぶ、これでだいじょうぶ」
としきりにつぶやいていました。
さらにその老人は絵馬を何十枚も書き、帰っていきました。
その老人の異様な様子から誰かに配るために買ったというような常識的な理由は考えづらいです。独り言の内容からして、おそらくはすべて自分用に買ったのではないのでしょうか。
封魔矢やお札を一枚買えば縁起がいいのですからいくつも買えばもっと縁起がいいはず、という理屈なのでしょうか。
なんにしろ、本当に縁起が悪いものを見たような、そんな気持ちにさせられてしまいました。
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