第5章 秘密の接触(中編)

翌日、教室に入ると、昨日接触した男子が少しだけこちらを見ているのに気づいた。

「……平静を装わなきゃ」

小さくつぶやき、机に向かう。心臓の鼓動は依然として速く、呼吸も浅くなる。


微妙な距離感


昼休み、友達と一緒に弁当を食べていると、男子が近づいてきた。

「昨日の写真、もっと見せてよ」

冗談交じりの声だが、紗良にはそれが鋭い刃のように響く。


「そ、それは……」

言葉が途切れる。笑顔を作るが、手のひらが汗でじっとりと湿る。

「や、やっぱり偶然だと思うよ」

心の中で何度も繰り返す。


男子は軽く笑って去っていったが、その一瞬で紗良の胸は締め付けられ、肩が震える。


内心の焦燥


放課後、一人で帰る道。夕暮れの光が長く伸びる中、紗良は思わず立ち止まる。

「どうして、私……こんなに怖がってるんだろう」

小さく呟き、背中を丸める。友達と距離が近づいたことで、秘密を抱える重みがさらに増していた。


学校で普通の女子高生として振る舞うことと、モデルとしての顔を守ること――二つの世界の板挟みで、心は張り裂けそうになっている。


家での安堵と緊張


家に着くと、紗良は制服を脱ぎ、撮影用の衣装に着替える。鏡の前に立つと、神谷颯の完璧な笑顔が映る。

「……よし、これで大丈夫」

深呼吸し、肩の力を抜く。学校での緊張は一瞬で消え、華やかな世界に没入できる。


しかし胸の奥にはまだ不安が残っていた。

「明日も……大丈夫かな」

鏡の中の自分に問いかける。二つの世界を生きる少女にとって、安心はほんの一瞬の幻想にすぎない。

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