第5章 秘密の接触(前編)

朝の教室、窓から差し込む光に照らされながら、紗良は静かに席に座った。昨日の撮影で寝不足の体は重く、頭の中では学校とモデル活動の両立を改めて考えていた。


「今日も何とかやり過ごさなきゃ……」

小さくつぶやき、ノートに視線を落とす。だが、心の中はすでに不安でいっぱいだった。


近づく距離


昼休み、いつもの友達グループに紗良が座ると、ふとクラスメイトの男子が近づいてきた。

「ねえ、ちょっといい?」


紗良は一瞬ドキリとする。距離が近い――だけど、普通の会話のように見える。

「う、うん……どうしたの?」

ぎこちなく返すと、男子は少し笑いながらスマホを見せる。


「これ、昨日の話の続きなんだけど……ちょっと似てる気がして」


胸がぎゅっと締め付けられる。スマホの画面には神谷颯の写真が映っている。紗良は必死で平静を装い、手元の弁当を押さえた。


心の揺れ


「そ、それって……偶然だよね?」

声が小さく震える。相手は笑っているが、心臓は破裂しそうなほど速く打つ。


「うん、そうだね。偶然、きっと偶然」

心の中で必死に繰り返す。もしこの瞬間、誰かに正体がばれたら――想像するだけで全身が冷たくなる。


放課後の葛藤


授業が終わり、紗良は一人で帰り道を歩く。街の雑踏の中、昨日の撮影と今日の出来事が頭の中で渦巻く。


「どうして私は、こんなに怖がってるんだろう……」

誰にも言えない思いを胸に、小さく肩を落とす。友達との距離は少し近づいたはずなのに、秘密があるために心は遠く感じる。

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