第4章 学校と撮影現場の板挟み(後編)
両立の危機
電車の中でも気が抜けない。隣に立つ女子高生が、バッグの隙間から見えた衣装に気づきそうになる。
「……だめ、絶対にバレちゃダメ」
思わず声を出さないように息を止め、体を硬直させる。鼓動が耳にまで響き、冷や汗が背中を伝った。
到着した駅から撮影現場までは走るしかない。紗良は息を切らしながら、街の雑踏を縫うように進む。学校とモデル活動、二つの世界が一気に押し寄せる。
現場での切り替え
撮影スタジオに着くと、スタッフがすでに待っていた。
「颯、準備はいい?」
その声に、紗良は一瞬だけ緊張で立ちすくむ。だが、制服での疲労感を振り払い、鏡の前で微笑む。
「はい、準備できました」
鏡の中の自分は、誰もが憧れる神谷颯の顔だ。学校での焦燥は一瞬で消え、華やかな世界に没入する。しかし、胸の奥の緊張は完全には消えていない。
心の重さ
カメラの前で微笑みながらも、紗良の心はまだ張り詰めていた。学校での生活とモデルとしての仕事、二つの世界を同時に生きる少女にとって、平穏はほんの一瞬の幻に過ぎない。
「……どうして、こんなに大変なんだろう」
小さくつぶやき、鏡の中の完璧な笑顔に視線を落とす。焦燥、孤独、緊張――すべてが胸の奥で絡み合い、明日への不安をさらに膨らませる。
二つの世界の間で揺れ続ける少女の一日は、今日もぎりぎりで終わろうとしていた。
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