第4章 学校と撮影現場の板挟み(中編)
翌朝、紗良は寝不足で目をこすりながら教室に入った。頭はまだ昨日の撮影の残像でいっぱいで、黒板の文字がぼんやり揺れる。
「大丈夫? また寝不足?」
友達の声に、顔を上げて笑顔を作る。
「うん、大丈夫……ちょっと昨日遅くまでやってただけ」
心の中では、午後からの撮影が気になって仕方がない。授業に集中しなければならないのに、頭の片隅では颯としてのスケジュールが渦巻いている。
時間との戦い
放課後、紗良は学校を飛び出し、急ぎ足で家に向かう。途中、道を渡る人や自転車にぶつかりそうになりながらも、手にしたバッグの中の衣装を確認する。
「間に合わなかったら……どうしよう」
胸の奥が締め付けられ、心臓が早鐘のように打つ。
駅のホームで電車を待つ間も、スマホで撮影のスケジュールを何度も確認する。学校の生活とモデル活動の間で、いつも時間との戦いに追われている自分に、ため息が漏れる。
小さなハプニング
電車の中で、紗良のバッグの隙間から衣装が少し見えた瞬間、隣の女子高生が興味深げにチラリと覗く。
「……!」
思わずバッグを引き寄せ、顔を赤らめる。気づかれていないことを願いながら、心臓は破裂しそうなほど高鳴る。
「ダメ……絶対にバレちゃいけない」
小さくつぶやき、深呼吸して自分を落ち着ける。学校での平凡な生活と、モデルとしての華やかな世界――そのギャップが、こんなにも自分を追い詰めるのかと痛感した。
家での切り替え
家に着くと、紗良は急いで制服を脱ぎ、撮影用の衣装に着替える。鏡の前でメイクを整えると、そこには完璧な神谷颯の顔が映った。
「……よし、切り替え完了」
鏡の中の自分に小さくつぶやき、肩の力を抜く。学校での緊張は一瞬で消え、華やかな世界に没入できる瞬間。
だが、胸の奥にはまだ緊張と焦燥が残っている。学校と撮影、二つの世界を同時に生きる少女にとって、平穏はほんの一瞬の幻想にすぎない。
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