第4章 学校と撮影現場の板挟み(前編)
朝の光が差し込む教室で、紗良は眠そうに机に伏せていた。昨夜の撮影で寝不足になったせいか、目が重い。周りのクラスメイトが笑いながら話しているのに、心ここにあらず――まさに板挟み状態だった。
「紗良ちゃん、大丈夫?」
友達の声で現実に引き戻される。小さくうなずき、笑顔を作る。
「うん、大丈夫……ちょっと眠いだけ」
だが、心の中ではすでに午後の撮影のことを考えている。授業が終わったら急いで帰宅し、颯としての顔に切り替えなければならない。
二つの世界の狭間
授業中も、紗良の心は落ち着かない。ノートに書く文字は雑になり、頭の中では撮影でのポーズやセリフがぐるぐると回っている。
「今日も無事に学校をやり過ごせるかな……」
小さくつぶやき、深く息を吸う。学校での平凡な生活を守ることと、家での華やかな世界を両立させること――その狭間で、紗良の心は常に張り詰めていた。
放課後の急ぎ足
放課後、教室を飛び出し、制服姿のまま駅へ向かう。バッグの中には撮影用の衣装や小物がぎっしり詰まっている。
「間に合うかな……!」
焦りが全身を駆け巡り、足取りは自然に速くなる。
通学路の人混みの中で、ふとした視線にハッとする。誰かに制服姿を見られると、颯の仕事とのギャップが露呈してしまう――そんな恐怖が、胸をぎゅっと締め付けた。
家での切り替え
帰宅すると、すぐに部屋に駆け込み、制服を脱ぎ捨てる。撮影用の衣装に着替え、メイクを施すと、鏡の中に神谷颯の顔が現れる。
「……よし、これで準備完了」
鏡越しの自分に小さく呟き、深呼吸をする。学校での緊張は一瞬で消え、華やかな世界に没入できる。
しかし、胸の奥にはまだ緊張が残っていた。学校とモデル活動――二つの世界を同時に生きる少女にとって、平穏は一瞬の幻想に過ぎない。
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