第3章 偽りの友情(後編)

その日の放課後、教室には数人の友達が残っていた。紗良は心臓をぎゅっと押さえながら、笑顔を作る。

「みんな、今日も一日お疲れ様」

声は少し高めに出したが、微かに震えているのを自分でも感じた。


友情と疑念


友達の一人が笑いながら言った。

「ねえ、紗良ちゃんって、ほんと秘密多そうだよね。なんか隠してるでしょ?」


紗良の体が一瞬固まる。

「えっ、そ、そんなこと……」

慌てて否定しようとするが、言葉が途切れ、心臓は爆発しそうに早く打った。


「冗談だよ、からかってるだけ」

友達は軽く笑いながら肩をすくめた。だが、紗良の胸の奥には鋭い痛みが残る。


「危ない……このままだと、本当にバレるかもしれない」

心の中で何度も繰り返し、手のひらは冷たく汗ばんでいた。


一人の帰宅


教室を出ると、夕暮れの光が窓から差し込み、廊下は長く伸びた影に包まれていた。紗良は小さく息を吐き、肩を落とす。

「友達と普通に笑ってるのに……どうしてこんなに怖いんだろう」


誰も気づかない、誰にも話せない孤独。笑顔の裏で心は張り裂けそうになっている。二つの顔を持つことの重さが、じわりと全身に広がる。


家での逃避


家に着くと、紗良はすぐに撮影用の衣装に着替え、鏡の前に立った。ライトに照らされた顔は、完璧な神谷颯の姿だ。


「……これだけは、私の世界」

小さく息を吐き、鏡に映る自分を見つめる。学校での緊張と不安が一瞬だけ薄れ、心が静かになる。


しかし、胸の奥にはまだ不安が残る。

「でも、明日も……同じようにやり過ごせるかな」

心の中で小さく問いかけ、鏡の中の完璧な笑顔に答えを探す。


二つの世界を生きる少女の葛藤は、まだ終わらない。友情を守るため、秘密を抱え続ける日々は、今日も続いていく――。

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