第2章 初めての危機(後編)
その日の放課後、教室には数人だけが残っていた。紗良は荷物をまとめながら、心臓が押しつぶされそうな緊張に襲われていた。
「誰もいないはず……」
小さく呟き、背筋を伸ばす。だが、視界の隅で動く影が気になって仕方がない。
バレそうな瞬間
突然、昨日の男子がスマホを手に戻ってきた。
「ねえ、さっきの写真……やっぱり似てると思うんだよね」
紗良は瞬時に顔色を変え、手で弁当箱のフタを叩きつけるように閉じた。
「そ、そんなことないよ! 本当に偶然だってば!」
声が思わず大きくなり、心臓は破裂しそうなほど早く打つ。
男子は一瞬眉をひそめたが、軽く肩をすくめて立ち去った。しかし、その数秒間で、紗良の胸は恐怖で締め付けられた。
「危なかった……」
息を整えながら、手の震えを必死に押さえる。秘密がほんの一瞬で崩れかける、そんな感覚に全身が震えた。
心の崩壊寸前
帰り道、夕暮れに染まる街は美しいはずだった。だが、紗良の心には重苦しい影しかなかった。
「私、いつまでこんな生活を続けられるんだろう……」
涙がこぼれそうになり、腕で顔を覆う。誰にも相談できず、孤独であることが余計に心を痛める。
二つの顔――普通の女子高生としての顔と、人気モデルとしての顔。どちらかが崩れた瞬間、全てが崩れる。恐怖と焦燥が胸の中で渦巻く。
家での現実逃避
家に着くと、紗良はすぐに撮影用の衣装に着替え、鏡の前に立った。ライトに照らされる顔は、誰もが憧れる神谷颯そのものだった。
「……これが、私の居場所」
小さく息を吐き、鏡に映る自分を見つめる。学校での恐怖は一時的に消え、少しだけ心が軽くなる。
しかし、胸の奥にまだ不安は残っていた。
「でも……次は、もっと危ないかもしれない」
未来に向ける目は、覚悟と恐怖で揺れている。二つの世界を生きる少女の戦いは、まだ始まったばかりだった。
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