第2章 初めての危機(前編)
朝の空気は冷たく、澄んでいた。紗良は制服を整えながら、心の中で小さくため息をつく。昨日の昼休みの出来事――神谷颯の話題を聞いた瞬間の鼓動――がまだ残っている。
「今日も、誰にも気づかれないようにしなきゃ……」
自分にそう言い聞かせ、鏡に映る地味な自分の顔をじっと見つめる。
小さな違和感
教室に入ると、昨日とは少し違う空気が漂っていた。クラスメイトたちが何やらこそこそ話している。視線が時折こちらに向けられるたび、紗良の胸は不安で締め付けられる。
「おはよう、紗良ちゃん」
微笑みを返すが、声が震えたのに気づいただろうか。
席に着くと、ノートを開く手がわずかに震えている。心臓の鼓動が耳に届きそうなほど速くなる。頭の中では昨日の話題がぐるぐると回っていた。
「なんであの話を聞かなきゃいけなかったんだろう……」
危険な兆し
昼休み、友達と教室で昼食をとっていると、ある男子がスマホを手に近づいてきた。
「ねえ、見て! 神谷颯の最新写真だけど……紗良ちゃんに似てる気がするんだよね」
紗良は思わず弁当を落としそうになり、慌てて手で押さえる。
「そ、そんなことないと思うよ……」
声が震え、笑顔もぎこちない。
男子は軽く笑ってスマホをしまったが、紗良の心臓はまだ暴れたままだった。もしも誰かが本気で疑ったら、秘密はすぐに崩れる――その恐怖が胸に重くのしかかる。
内心の葛藤
放課後、帰り道を歩きながら、紗良は思わず立ち止まった。夕陽が差し込む街並みは美しく見えるが、心の中の不安は消えない。
「どうして私は、こんな生活をしているんだろう……」
小さくつぶやき、肩を落とす。学校では普通の女子高生、家ではモデル。二つの世界を両立させるプレッシャーが、体全体を締め付ける。
「明日も……絶対にバレないようにしなきゃ」
決意を胸に、紗良は足を再び動かす。だが、その足取りはいつもより重く感じられた。
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