第7話 魔法実験

攻撃魔法の検証。


既にステータスに表示されている【ウォーター】を発動するよう念じてみる。


手の少し先から水が生まれてちょろちょろと流れ落ちる。


発動は、呪文などは必要なく、ただ使おうと思うだけでよかった。


説明し難いが…手を上げようと思えば手が上がるみたいな感じだな。


イメージの中でいくら手をあげる事を想像しても手は動かないが、手を本当に・・・動かそうとすれば手は上がる。その違いを説明できないのと同じような感じだ。まぁ、本気で“使おう”と思えば使えると言う事だ。簡単でいいな。


さらに強く、もっと強く! と念じると水の流れが強くなっていく。(そして同時に魔力も減っていく感覚が分かってきた。)


だが多少勢いが強くなってもただの放水。これでは大した攻撃力はない。さらに強くしないと……だが、魔力を大量に込めるのは限度がある。それに、魔力が足りない。どんどん魔力が減っていっているのを感じるからだ。


…そうだ、細くするんだ。出口を絞ったほうが水流は強く速くなる。際限なく細く…、高水圧に。人間だった頃の知恵だ…うん、できました。指の先から超微細かつ超高圧の水流が吹き出している。これなら当てれば切れる・・・んじゃないか?


泉の縁に生えていた植物を切ってみようかと思い…


…やめた。植物だって生きているのだ。子供じゃないのだから、たとえ路傍の雑草だろうと無意味に切るのは良くない気がした。


―――そんな事、人間だった時には考えなかったけどな。


いや、普通の森の中だったらやっぱり考えなかった気がする。だが、ここ・・は普通じゃない…。この泉周辺の神々しい雰囲気が、そんな風に思わせたのかも知れない。


俺は超高圧水流を傍らにあった大きめの石に当ててみた。すると少しずつ削れていく。時間を掛ければキレイに切断できてしまいそうだ。ウォータージェットだ。水を使った切断機の原理。


これくらい威力があれば、柔らかい生物に当てればダメージがありそうな気がする。でも至近距離でないとダメだろうな。そう言えば小川に居た怪物もウォータージェットを撃ってきたね……どれくらいの水圧だったんだろ…? 







ステータスを確認すると、予想通り、水属性の魔法のリストに【水鋸】ウォータージェットが増えていた。


やはり。ステータスには使える魔法が表示されているのではなく、自分が使った(作った)魔法が記録されているのかもしれない。


おっと、調子にのってジェットを使いまくっていたらフラッとした。魔力使いすぎか…?


ステータスを確認してみると、MPが4/103になっていた。


残り4まで減っていたが、また分母が増えてる。あれか、魔力を使うほど、回復した時に魔力が増えるとかいう異世界あるある・・・・・・・


もっと色々試したいんだけど、休むしかないか…。


いや、待てよ。


泉の水、飲んでみよう。


重症だった母猫が完全回復を果たした泉の水だ。MPも回復するかも?


…結果は大勝利!


MP:103/103


これでガンガン実験ができる。ならばもう少し水流系魔法にバリエーションを。


切断するほどの高水圧ジェットは、指の先数センチしか効果がない。それ以上は離れるほど霧状になって散ってしまうからだ。


今度は、放出口をもっと太くして、速度・圧力は落ちてもいいから大量の水を吹き出すようにしてみる。イメージは火災の消火用の放水ノズルだ。勢いよく大量の水が飛んでいく。文字通り、消火とか水撒きに良さげである。が、攻撃力はなさそう? まぁそれは予想通りだが。


いや実は、あの鷲の羽が燃えていたのを思い出し、水掛けて消してやったらどうなるんだろう? と思ったのだ。


もしかしたら、火を纏ってる魔物は、火を消されると死ぬ、あるいは弱体化したりするんじゃないか? 


…何の効果もない可能性もあるが。


やめ。


ステータスを確認。


【放水】ウォーターストリームが追加されていた。


ただ、何もないところから大量の水を生み出し放水するのはかなり魔力を食う作業のようで、すぐに魔力が減ってフラフラしてくるのが難点だな。


一旦やめ。水はここまでにして、次は、やっぱり定番の火属性を試してみよう。


火には水、と安直に考えたが、逆もありえる。水が火に弱い可能性。もしそうであった場合、火属性に対抗するためには、同じ属性の火をぶつける必要がある、という可能性も考えたのだ。


ファイア


シュボッと指の先に小さな火が出た。イメージは前世のライターだ。俺は前世でタバコも吸わなかった―――タバコ買う金なんてなかったしな―――ので、ライターを持った事はないが、仕事の同僚には吸う人間が多かったので、ライターを使うところは良く見た事がある。


法律ができて分煙化が進み、喫煙所を設けて社内禁煙が義務化されたというのに、タバコを吸いながら仕事をするのがOKという時代遅れの会社だったからな。


特にパワハラクズ上司は、俺にタバコの煙を吹きかけては俺が嫌そうな顔をするのを見て面白がっていたな。


実は、煙が嫌だったんじゃなくて上司の臭い息を吹付けらるのが不快だっただけなんだが。タバコとコーヒーの臭いが混ざるとゲロ吐きそうなほど臭くなるんだよ、本人達は気付いてないようだったけどな。


その性格最悪の上司はジッポのライターがお気に入りで、必要もないのに何度も火を点けては閉じるを繰り返していた。十万以上するモノだとか自慢していたな。他にも、腕時計とか万年筆とかタイピンとか色々自慢していたな。腕時計は五十万以上したとかなんとか。


貧乏で何も持ってない俺には縁のない世界だったが。


振り返ってみれば、日本での俺の人生は、愛も家族も趣味もない、楽しみなど何もなく、ただ生きて消耗していくだけのものだったなぁと思う。


手の先に燃えている火を見ていたら嫌な事を思い出してしまったが、ここは日本ではない。気をとりなおして検証続行だ。


魔法で出した炎は、燃料もないのに燃えているのが少し不思議ではある。質量保存の法則はどこへいった? 先程の水もそうだが、“魔力” が水や炎に変わっているのか? 


その炎を投げてみる。火は指先から離れ、放物線を描いて地面に落ちて消えた。


焚き火の着火には便利そうだね。何の道具もなく着火できるのなら、地球のキャンパーなら喜ぶかも知れないが、攻撃魔法として使うにはちょっと…。


もっと大きな炎を、と思って少し魔力を込めたら火が大きく吹き出した。さらに強くしていくと火炎放射器のように大きくというか長く吹き出した。手を上に向けていたので被害はなかったが、危ないのですぐに止めた。


もう一度。


今度は、先ほどの水流と同じ要領でバーナーの炎を絞って・・・みた。


細く、高圧…いや高温に!


先ほどウォータージェットで削った石に当ててみる。収束された炎が眩しい点となって石の上に現れた。そのまま続けていると徐々に石が赤くなってきた。


なんとなく、鉄工所などで鉄を溶断するシーンを想像したのだが、そうか、鉄と違って石は溶断はできないんだった。これ、ずっと続ければそのうち石全体が溶けて溶岩になるのかな? その前に魔力がなくなるかな?


火を止めてステータスを確認すると、火属性魔法の項目に、【ファイア】【バーナー】が追加されていた。


(熱せられた石を放置して、母猫や兄弟猫達が触れてしまったら危ないので、再び水を出して冷やしておいた。)



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