第4話 吾輩は猫である。そして母(猫)の愛は偉大である。
俺の治癒魔法? が効いたのか、少しだけ母猫は元気になったようだ。だが、全身の火傷は未だ酷い状態のままで、完全に治すには至っていない。
さらに俺は治癒魔法を掛け続けようとしたが、俺は目を開けた母猫に首根っこを咥えられ、そんまま穴の中に運ばれてしまった。
うん、なるほど。首根っこを咥えて運ばれると、何も抵抗できないね…。
母猫は俺を他の子猫達の間に押し込むと、俺と子猫の兄弟達をお腹に抱え込むようにして寝転がる。震えていた子猫達は安心したようで、母猫の乳首に向かって這っていき、母乳を飲み始めた。
俺は、母猫の懐から離脱しようとしたのだが、すぐ母猫が俺を捕まえて逃してくれない。そして俺の顔を乳首の所に押し付ける。俺が乳を飲まないと母猫は落ち着かないみたいだ。
……仕方がない。諦めて俺が乳首を咥えると、母猫は安心したように「ナォン」と鳴いて目を閉じた。
乳を飲むフリをしながら…
……いや、飲んだけどね。意外と違和感なく飲めたのは、俺も既に猫、それも子猫だからだろうか?
飲みながら、俺はもう一度治癒魔法を掛けてみる。
魔法を使えば使うほど、どんどん何かが身体が抜けていく感覚がして、疲労感がぐんぐん増していく。おそらく、魔力が消費されているのだろう。
身体が重くなってきた……。
+ + + +
俺はいつのまにか眠ってしまったようだ。
ただ、治癒魔法の効果は出ているようで、母猫の生命力のようなものがさらに強くなっているように感じる。
俺は母猫の乳を飲み、限界まで母猫に回復魔法を掛け、気絶するように眠る事を繰り返した。
そんな事を三日ほど続けたら、かなり母猫は元気になったが、やはり身体は爛れたままだ。火傷の後は感染症などが危険だと前世で聞いた気がする。このままでは危険かも知れない。
なんとか治してやれないかと思うが、俺がいくら治癒魔法を掛けても、少しずつは元気になっていくようなのだが、劇的には回復してくれない。どうも、今の俺の治癒魔法では火傷の後まで消せるほどの力はないようだ。
それに、巣穴が浅い。子猫達を奥に押し込み母猫の身体で蓋をしている状態だ。母猫の身体は半分ほど外ほど外に出てしまっている。母猫が穴を掘ったのだとしたら、もっと深く掘ればいいのにと思うが、掘っている途中で襲われてしまったのかも知れない。そして今は、母猫に穴を掘る体力がないのだろう。
だが、この状態でまた、あの鷲のような敵が襲ってきたら危険だ。
俺は意を決して、母猫が眠っている間に巣穴を抜け出した。
当てがあるわけではないが、もう少し安全な場所がないかと思ったのだ。引っ越しするにしても、母猫は怪我をしているし子猫達はまだまだ幼い。移動するにしても引っ越し先を先に見つけておく必要がある。
まぁ、まずは巣穴の周辺の調査・警戒からだが。
ついでに、自分の魔法についても少し検証してみよう。この世界では、自分の事すらもよく分かっていないのだ……。
分かっている事から整理。
まず、自分の姿から。うん、吾輩は子猫である。名前はまだない。いや、前世の名前がある。とりあえず名前はそれでいいだろう。カイトだ。
前世の、日本人としての俺は、姓は鷲巣、名は界渡と言った。なんだか渡世人みたいな名だが、俺の両親が愛情を込めて悩んでつけてくれた……というわけじゃなく、届け出の時にその場で適当に決めたんだそうだ。なんかちょうどヤクザ映画をネットで見てたから、とか酔っ払った時に父が言っていたのだ。
学校の図書館で辞書を調べた事があるが、“渡世人” というのは、流れ者の博徒の事だそうだ。博徒、英語言うとギャンブラーだな。まぁ渡世人なんて死語、自分の名前に関係なければ俺も知らなかっただろう。
まぁ、実際にこうして “世界” を渡ってしまったわけだから、言いえて妙な名前ではある。
まぁ名前などどうでもいい。日本での自分の事も。
問題は今の自分とこの世界についてだ。
さて、次に分かっている事は、たしか……
“ケットシー” という種族で、『全ての魔法が使える』
……と言っていた気がする事。
分かってる事は以上だ。情報少なっ!
(※転生時の記憶がどうも曖昧なのだ。)
う~ん、とりあえず……
調べるのは魔法についてだな。
魔法ってどうやって使うんだ?
…そうか、落ち着いて考えてみれば、異世界転生したら、やるのはまずアレだよな。
スマホでラノベを読んでいたから、なんとなく知識はあるのだ。愛されて育てられたわけじゃない(むしろその逆)だった俺は、社会人になって仕事で支給された業務用のスマホが人生初スマホだった。
業務用なので勝手にアプリをインストールしたりはできない。…できないはずなのだが、中途入社だったせいか、充てがわれたのが誰かのお古で、なぜか最初からラノベのアプリがインストールされた状態だった。
おかげで、仕事の休憩時間や待ち時間にラノベを楽しませてもらい、息抜きになった。その知識が今の状況(異世界・異種族転生)にも役に立っているというわけだ。
異世界転生?
本当にそんな事があるのか?
それについては、俺は素直に受け入れている。
常識的に考えたら負けだ。
世の中何が起きるかなんて分からない。
そもそも俺にとっては、前世の日本でも、自分以外の “世界” はいつも理解も納得もできない理不尽で溢れかえっていた。
何があっても今更驚きはしないさ…。
というわけで、さっそく
コホン…。
「
お! 表示された!
良かった、もしこれが上手く行かなかったらいきなり打つ手なしになるところだった。
眼前に浮かぶ半透明の情報板。
名前:カイト
種族:Cait Sith
性別:オス
年齢:0歳
うん、やっぱり名前は引き継がれているようだ。別に拘りはないので変えても良かったんだけどな…。
種族はカイトシス? いや、これでケットシーって読むのか。
てかこれだけ?
もっとこう、魔法の属性とか、使える魔法とか出るもんじゃ?
あ、スクロールしたら出てきた。
MP:37/100
魔法属性:全属性
MPはマジックポイント、つまり魔力の量って事だろうな。100という数値が多いのか少ないのかよく分からないが。数値が減っているのは、母猫に治癒魔法を使って消費しているからか。
属性は全属性…って、これだとどんな属性があるのか分からんな…。
お、肉球で触れたままにしてたら魔法の種類が表示された。長押しか。
属性は【水】【火】【風】【地】【光】【闇】【無】の七種類……
だがその時、何か聞こえた気がして、ステータス画面から意識を外に向ける。(ステータス画面はその瞬間に消えた。)
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