12月16日『フリー(になった)タイム』

 君が嫌いだと言ってしまうのは本当は簡単で、それでも毎週末君とつまらない映画を観ていたのに、君が急に別れようだなんてメッセージを寄越して会おうともしなくなったから、僕はひとりでカラオケで騒ぐ羽目になった。君が逆張りで頑なに聴こうとしなかったミセスを入れようとしたら最近のは知らない曲ばかりで、ああ僕は確かに君の恋人だったのだと、思い知らされる。この一年間の心の地層がため息に押しつぶされていくような、それとも、ずっと溜めてきた膿がマイクに乗って換気の効いた部屋に発散していくような、そんなフリータイム三時間だった。

 君は他人です。

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