12月15日『幸せになりたかった日』

 過ぎ去ってみればただの愚かなひとにしか思えないけれど、ついさっきまでは君は僕のヒーローだった。いつかはいなくなると薄っすら思っていたけれど、それでも一生いっしょにいようねってあの日新幹線の中で言ったのはぜんぜん嘘じゃなくて。むしろそれは、自分にかけた呪いみたいなものだった。肘掛けを上げていつまでも手を繋いでいたのを思い出す。君の寝顔はまだカメラロールにある。吐き気がしてしまう、それを懐かしいだなんてまだ思えない。それなのに、ブラックコーヒーを頼んだ僕をこんなときでもカッコつけるのかと言わんばかりに冷たく一瞥した君の目は、もう懐かしい。

 君が居心地悪そうにカフェを出ていってから十分も経っていないけれどもう君のことが一切わからなくなった。とうとう君と幸せになることはできなかった、それでも、僕らの不幸の肯定くらいはできただろうか。

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