12月9日『日向ぼっこの詩』

 授業を抜け出して日向ぼっこをしていると、自分がいま地球にいるということが、こんなにもうすら寒く感じて空を見上げられなかった。小春日和で、僕のからだは容赦なくあたたまっていく。地面を見ても蟻は見えず、彼らは今何をしているんだろう、蟻を踏まないためにって下を向いて歩いてきたのにそんな言い訳も立たない冬だ。

 空を見られない代わりに僕の目線は地面を貫いて反対側の宇宙に達する。君の棲む惑星に電話をかける。君の太陽は僕の星からも見えるんだ、ということを話しているあいだにチャイムが鳴って、時差って何時間? 君の星から見える太陽の明るさについて考えを巡らせて、僕は陽光のなかでイカロスの夢を見る。

 地球を抜け出そうとした宇宙船が墜落したらしい。

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