12月3日『ともだち』

 帰りの電車の中で、口パクでロックンロールしているのが僕だ、君が読唇術を使えたらどんなに良かっただろう、それでも、僕にとっては君だけなのに、君にとっては僕じゃないんだ。君の寝息なんか聞きたくなくてイヤホンをつけている。たとえ音漏れが僕の言葉だとしても届くことはない、シューゲイザーの音圧が僕の脳みそを揺らす、その揺れは電車の振動と同期することがない。君は電車に揺られて寝ているんだという、絶望、僕はほんとうは恋なんてしたくなかった、君がいればよかった、教室も四号車も僕には果てしなく広いから、君の小ぶりな耳のなかにいたい、レコードに刻まれることのない、鳴り止まない音でいたかった。あんな愛の言葉なんて聞こえないようにしてやりたかった。

 ほんとうに恋なんていらない。

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