最終話 新しい旅立ち


ネコ・エリシオンの草原は、変わらず穏やかだった。


でも、今日は特別な賑わいがあった。

記憶の星の下で、無数の猫たちが集まっている。

若い猫たちは興奮し、古き猫たちの幻影は静かに見守る。


執行者たちも、もう威圧的なフィールドを張っていない。

ミケロンは、草原の少し高い丘の上に立っていた。その周りを、太郎、リナ、ピコ、トリオン、そして新たに家出(今は公式な「交流使」となった)してきた数匹の猫たちが囲んでいる。


空に、新しく生まれた記憶の星が輝いている。

それは、ミケロンの冒険と楽園の変革を記録した星。今や、誰でも触れれば、その感動を共有できる。


古き猫たちの幻影が、ゆっくりと全員に語りかけた。


『我らは、長きにわたり完璧を求めた。だが、真の完璧とは、停滞ではなく、進化であると知った。ミケロンよ、トリオンよ、そして外宇宙の友人たちよ。感謝する。ネコ・エリシオンは、これより「観測と交流の楽園」となる。外宇宙との扉を、慎重に、しかし確実に開く』


若い猫たちから、歓声が上がった。

クロとシロが、ミケロンの前に歩み寄った。

クロが、少し照れくさそうに言った。


『ミケロン……俺たち、間違ってた。君の記憶を見て、初めてわかったよ。外宇宙の不完全さが、こんなに美しいなんて』


シロが微笑んだ。


『これからは、私たちも一緒に冒険しよう。

執行者じゃなくて、案内人としてね』


ミケロンが笑った。


『うん。みんなで、面白いところたくさん行こう』


太郎が、ミケロンの頭を撫でた。


「お前、立派になったな。最初に拾ったときは、ただの食いしん坊の化け猫だったのに」


『食いしん坊は今も変わってないよ!量子ビット、補充しなきゃ』


みんなが笑った。

リナが空を見上げた。


「ここ、居心地いいね。しばらく滞在してもいいかも」


ピコが端末をいじりながら言った。


「情報発信の基地としても最高だよ。楽園と外宇宙の橋渡し、私が担当する!」


トリオンが、ミケロンの隣で尻尾を振った。


『私も、もっと冒険したい。みんなと、一緒に』


少し離れたところで、新たな家出猫(これからは「旅立ち猫」だが)たちが、船の前でワクワクしながら待っていた。


太郎が、みんなを見て言った。


「じゃあ、そろそろ出発するか。楽園も変わったし、次は、もっと遠くの宇宙を見に行こう。

退屈なんて、二度とさせない旅を」


ミケロンが、草原に向かって大きくテレパシーを放った。


『みんな、待ってて。面白い話、いっぱい持って帰るから!』


若い猫たちが、尻尾を振って見送る。船のハッチが閉まり、「シルバーフィッシュ」と「はちわれ丸」は、楽園のブラックホールの窓を通って、再び外宇宙へ飛び出した。


新しい記憶の星が、一つ、また一つと増えていく。退屈を知らない、永遠の旅が、続いていく。




――完――

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