第14話 三隻の追手と初の反撃


ノヴァ・リムのコロニー外縁宙域。


「シルバーフィッシュ」と「はちわれ丸」は連結を解除し、戦闘態勢に入っていた。

後方から急速接近する黒い船三隻。

中央の大型旗艦は、これまで見たどの追跡船よりも威圧的だ。


両脇の小型二隻は、クロとシロのものと同型。

ブリッジで、リナが操縦桿を握り、ピコが補助システムを操作。

太郎は武器管制、ミケロンは膝の上から量子干渉を準備していた。

ピコの三つの目がモニターを忙しく追う。


「旗艦の識別信号……『エリシオン・ガーディアン』。

楽園直属の執行艦だよ。

武装は重力ビームと空間歪曲フィールド。

小型二隻は支援型」


リナが舌打ちした。


「厄介だね。一対三じゃ、逃げるだけでも厳しい」


太郎がスクリーンを見据えた。


「逃げるだけじゃだめだ。もう終わりにするって決めたろ。反撃する」


ミケロンが決意を込めて言った。


『うん。私の能力で、旗艦の重力システムを乱せるかも。でも、エネルギー使いすぎるとまたダウンしちゃう』


ピコが提案した。


「私のハッキングで、支援二隻の連携を切るよ。偽の命令信号を送って、互いに敵と認識させる」


リナが笑った。


「いいね。じゃあ、作戦はこうだ――まずピコが支援艦を混乱させ、ミケロンが旗艦の重力を乱し、私と太郎で集中砲火を浴びせる」


通信に、冷たいテレパシーが割り込んできた。


『ミケロン。抵抗は無意味だ。今回は、古き猫たちの最終通告。生きたまま帰還するか、記憶だけを強制抽出するか。選べ』


声は複数の猫が重なったような、威厳あるものだった。


『選ばないよ。私は、私の道を行く』


ミケロンはそう答えた。


それを合図にしたかのように戦闘開始。

まずピコがハッキングを開始。

支援二隻の通信に偽信号を注入。

突然、小型一隻がもう一隻に向かって射撃を始めた。


『……何!?味方への攻撃!?システム異常!』


混乱する支援艦。

その隙に、リナが「シルバーフィッシュ」を急旋回させ、旗艦の側面に回り込む。

太郎が主砲をチャージ。


「撃つぞ!」


プラズマビームが旗艦のシールドを直撃。

シールドが揺らぐが、耐える。

旗艦から反撃。

重力ビームが放たれ、周囲の空間が歪む。

「はちわれ丸」が引き込まれそうになる。

ミケロンが前足を振り下ろした。


『今だよ!』


量子干渉波が旗艦に直撃。

旗艦の重力発生器が暴走し、自らのビームが逆流する。旗艦が大きくよろめき、シールドが一時ダウン。


リナが叫んだ。


「チャンス! 全砲門、集中!」


二隻の船から同時射撃。

旗艦の装甲が破損し、内部から火花が散る。

支援二隻はまだ互いに攻撃し合っており、援護できない。

旗艦から、慌てたテレパシーが飛ぶ。


『……撤退!損傷率40%……ミケロン、次は容赦しない』


三隻の黒い船は、空間を歪めて緊急ジャンプ。

逃げ去っていった。

ブリッジに、勝利の静寂が訪れた。

ピコが耳をぴくぴくさせて喜んだ。


「やった! 初勝利だよ!」


太郎が息を吐いた。


「……生きてるな、みんな」


リナが操縦席で笑った。


「もちろん。これで、楽園も少しはビビったはず」


ミケロンが太郎の膝で丸くなった。


『ありがとう。

みんながいなかったら、私、一人じゃ戦えなかった』


だが、勝利は完全なものではなかった。

ピコのモニターに、新たな情報が届く。


「楽園側の反応……保守派は激怒してるけど、

革新派の勢力が急増。ミケロンのメッセージに触発されて、数匹の若い猫が実際に家出を決行したらしい」


太郎が驚いた。


「家出?」


『うん。でも、出方がわからないと、外宇宙で迷子になるかも。私みたいに、運よくいい人に拾われないと……』


リナが真剣な顔で言った。


「なら、次はそっちか。家出してきた猫たちを、迎えに行く」


ピコが頷いた。


「私の情報網で、座標を探せるよ」


ミケロンが目を輝かせた。


『新しい仲間……楽園を変える仲間が、増えるんだ』


船は方向を転換し、

新たな家出猫たちの信号を探して進み始めた。

追手との戦いは、まだ続く。


だが、もう逃げるだけじゃない。

彼らは、楽園の未来を、自分たちの手で変えようとしていた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る