第13話 冒険の発信と最初の反響


ノヴァ・リムのコロニー、地下の隠し工房。


ピコの作業スペースは、ケーブルとホログラム画面で埋め尽くされていた。

壁には無数のモニターが並び、暗号化されたデータストリームが流れている。

ルナリの小さな体が、素早い動きでキーボードを叩く。


「よし、準備完了!

これでミケロンの冒険記録を、銀河の暗号チャンネルに流せるよ。追跡不能、発信元偽装、楽園の観測層にも届く特殊周波数」


ミケロンはテーブルの上に座り、少し緊張した様子だった。


『本当に、これでいいのかな……私の旅を、みんなに見せるなんて』


太郎が隣でコーヒーを飲みながら言った。


「お前が決めたことだろ。後悔するなよ」


リナは腕を組んで、ピコの作業を見守っていた。


「内容はどうする?これまでの冒険をダイジェストで?」


ピコの三つの目が輝いた。


「最初は短いメッセージからがいいよ。

ミケロンの声で、楽園の仲間たちに直接語りかける形。それに、ちょっとした映像も添付しよう」


ミケロンが深呼吸するように体を膨らませた。


『わかった。録画、始めて』


ピコがホロカメラを起動。

ミケロンが、カメラに向かってテレパシーで語り始めた。

声は優しく、でも力強い。


『みんな、元気?

私はミケロン。

家出して、もう結構経つよ。

楽園は綺麗で平和で、完璧だった。

でも、私は退屈で苦しくて、外に出てきた。

外宇宙は、怖いこともたくさんある。

追われて逃げたり、船が壊れたり、

賞金稼ぎに狙われたり。

でも、同時に、すごく楽しいんだ。

新しい友達ができて、

見たことない景色を見て、

毎日、何が起こるかわからない。

失敗もする。泣くこともある。

でも、それが生きてるって感じがする。

みんなにも、知ってほしい。

完璧じゃない世界の、面白さを。

私は、もう戻らない。

でも、みんなが変わりたいと思うなら、

一緒に新しい道を探そうよ。

――外宇宙より、ミケロン』


録画終了。

ピコがデータを暗号化し、発信ボタンを押した。


「送信完了!

これで、楽園の若い猫たちには確実に届く。

保守派にはブロックされるかもしれないけど、

革新派は絶対見るよ」


四人はモニターを見つめた。

最初は、何の反応もなかった。


数時間後――

ピコの端末に、暗号化された返信が届き始めた。

最初は一通。


『ミケロン、見たよ。

すごい景色……外宇宙って、本当にそんなに綺麗なの?

私も、ちょっと怖いけど、行ってみたいかも』

次に、二通、三通と増える。


『退屈症がひどくて、毎日眠ってるだけだった。でも、君の話見て、目が覚めた気がする』


『古き猫たちにバレないように、仲間と共有したよ。みんな、興奮してる』


『私たちも、家出したい。でも、どうやって出ればいいかわからない。助けて、ミケロン』


ミケロンの目が、潤んだ。


『……みんな、見てくれてる。私の声、届いたんだ』


太郎がミケロンの頭を撫でた。


「よかったな」


リナが少し真剣な顔で言った。


「でも、これで楽園の動きが加速する。

保守派は焦るだろうし、追手も本格化するかも」


ピコが耳をぴくぴくさせた。


「その通り。すでに、新しい賞金情報が流れてる。金額、上がってるよ」


その時、コロニーの警報が鳴った。


『警告。外部から複数船接近。黒い船……三隻!楽園の執行者だ!』


ピコが慌ててモニターを切り替えた。

クロとシロの船に加え、もう一隻大きい旗艦のような船。


「今回は本気だね……古き猫たちの直属部隊」


太郎が立ち上がった。


「逃げる準備を」


リナが銃をチェックしながら笑った。


「逃げるだけじゃなくて、少し反撃もしてみる?」


ミケロンが決意を込めて言った。


『うん。もう、逃げるだけじゃない。

みんなに、私たちの旅を見せ続けるよ』


四人は急いで船に戻った。

コロニーを離床し、追手を迎え撃つ態勢へ。

発信は、止まらない。


楽園の空に、新しい記憶の星が生まれ始めていた。


若い猫たちが、それを希望の光として見つめている。

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