第3話 誰のせいだ?
「……ちょっと、まずくない?」
会議室の空気が、重かった。
最新動画の公開から三日。
再生数は、明確に“いつもより低い”ラインで止まっている。
「初動が弱いだけだと思ってたけどさ」
「これ、戻らなくね?」
マネージャーが、管理画面をスクリーンに映す。
グラフは正直だった。
伸びるはずの時間帯で、きれいに失速している。
「企画が悪かったんじゃない?」
「いや、内容はいつも通りだろ」
誰かが言い、誰かが否定する。
会話は噛み合わず、少しずつ苛立ちだけが溜まっていった。
「じゃあ何?」
「サムネ?」
「いや……編集?」
その言葉が出た瞬間、空気がピリッと張りつめた。
「編集は変えたよね」
「外注に切り替えたばっかだし」
リーダーは、腕を組んだまま黙っている。
「でもさ」
「編集なんて、誰がやっても大差ないって言ってたじゃん」
その一言で、全員の視線がリーダーに集まった。
「……まあ、そうだけど」
歯切れが悪い。
誰もが、同じ名前を思い浮かべていた。
「前の編集、戻せないの?」
「一時的にでも」
誰かが、恐る恐る言った。
「無理でしょ」
「もう切ったし」
その瞬間だった。
「……あいつの時、数字安定してなかった?」
ぽつりと、誰かが言った。
誰も否定しなかった。
それが、答えだった。
「でもさ」
「戻ってきてくれって言うの、プライド的にどうなの?」
「向こうだって、今さら来ないでしょ」
会話は、どんどん濁っていく。
謝るか。
認めるか。
それとも、無視するか。
結論は出なかった。
その日の夜。
動画のコメント欄は、さらに荒れ始める。
『編集変わってから見なくなった』
『前の人、戻してほしい』
『テンポが致命的』
そして、ついに名前が出た。
『前の編集スタッフの人、辞めたって本当?』
――来たな。
俺は、スマホを置いた。
この流れは、もう止まらない。
視聴者は、数字より正直だ。
誰が良かったのか。
何が変わったのか。
答えは、コメント欄に全部書いてある。
その頃、俺は新しい企画書を開いていた。
自分ひとりでやる、新しいチャンネルのための。
もう、戻る気はない。
切り捨てられた場所に、価値はない。
俺は、俺のやり方で証明する。
――“誰のせいだったのか”を。
大人気YouTuberの裏を支えていた編集スタッフの俺、追放されたらチャンネルが崩壊した件 えいてぃーん @sikou_0234
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