第4話 生きる理由
月渚が誘拐された。
俺、星羅と妹の綺羅はひどく焦っていた。
俺たちの最愛の妹。そして青羽の脳といってもいい月渚の誘拐だ。落ち着いていられるはずがない。
校内での誘拐らしい。防ぎようが……あったのではないかと後悔ばかりを繰り返す。
俺たちきょうだいが裏社会に関わるようになったきっかけ。それは過去に遡る。
***
今から15年前。
その頃は俺たち家族は皆、裏社会に片足一つ突っ込んでいなかったし、存在すら知らなかった。
事件があったのは俺と綺羅が小学校から帰ったときだ。
「え……おとうさん、おかあさん……?」
生臭い血の匂いが家中を満たしていて、俺は吐いた。
「うそ、なんで?おきて、おきてよぉっ」
先に部屋の奥に行った綺羅が叫ぶ。
その部屋には俺たちの姉と妹がいたはずだ。
まさか2人とも……?
血の気が引いた。
俺たちふたり以外、全員殺された?
幼い俺たちには重すぎた。今でも思い出してはパニックになるほどだ。
よろめく足でなんとか綺羅の元へ向かう。
靴下は両親の血をたっぷりと含んで、なかなか前に進めない。進みたくない。
「きら」
「……星羅くん」
絶望しきった綺羅が見ていたのは姉の死体だった。
腹を刺されて出血多量で死んでいた。
両親も同じだった。
「月渚ちゃんがいないの」
綺羅が言う。
攫われた?それとももっとむごいことをされている?
俺は再び嗚咽した。
鉄の匂いがこびりついて離れない。
俺はここで死にたくなった。
「おにぃちゃん。おねぇちゃん」
そんな時だった。
月渚がクローゼットの中から出て来たのは。
「月渚ちゃん……っ」
手が赤黒く染まっているのにも関わらず、綺羅は月渚に抱きついた。
涙が出た。
触れる月渚の手はあたたかい。
生きている。
家族がこうされている間、この子はじっとクローゼットに潜んでいたのだろうか。
見ていたのだろうか。
この子は絶対に守る。そう綺羅と誓ったのはそれから間もなくしてからだった。
***
この事件後、俺たちは隣の部屋のおじいさんに“裏社会の生き方”を教わった。
80を超えた歳のその男は、俺たちを死んだ孫と重ね合わせていたらしい。
ずいぶん親切にしてもらった。
寿命でおじいさんが亡くなり、俺たちは3人で生きていかなければならなかった。
お互いが生きる理由だった。
「綺羅。月渚の場所は?」
「特定した。でも、お迎えが来たみたいだよ」
知らない足音がこの部屋に近づいているのは綺羅もわかっていたらしい。
鍵のかかっていない玄関の扉を開けて、小柄の男と数人の男が入って来た。
「やぁ、こんばんは。君たちと取引をしに来たんだ」
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