筆名の由来について思う、いくつかのこと

冬寂ましろ

☃☃☃

 虹乃ノラン先生の自主企画のお話を見て、筆名の由来について、やっぱり一度はどこかに書いておかないといけないな……と思い、この師走の慌ただしいなか、キーボードを叩いています。


 『冬寂』という名前は、SF好きなら知っての通り、ウィリアム・ギブスンの『ニューロマンサー』に登場する『ウィンターミュート』というAIからになります。SF読みからすれば俗っぽい名前ではあるのですが、音が消えた雪の木立で、ぼんやりと山並みを眺めるのが好きだったり、冬に関するお話しが大好きだったので、この名前にしました。それに、いつか私はSFを書くと思っていましたから。

 下の名前である『ましろ』は語感の良さとイメージ的に合ってそうなところから付け加えています。


 そしてもうひとつ、この名前に思うものがあります。同じ冬寂をハンドルネーム(ニックネーム)として名乗っていた彼女のことを。


 私はかなり古い人間でWindows95が出る前からネット、いわゆるパソコン通信をしていました。彼女はそこに集う人で、某大会社の社員でした。知的でめっちゃかっこいいお姉さんでした。かっこよすぎて私はあまり話せず、あこがれの人でもありました。


 あの頃、パソコンやスマホはいまほど普及しておらず、どこかマニアックだったり限られたところにありました。その界隈に女性がいること自体がめずらしい時代です。そこでゆるやかな女性同志のつながりがありました。


 ひとりは某大手通信会社の研究者。

 ひとりは某大手PC会社の営業。

 ひとりは某パソコン系雑誌のライター

 ひとりは個人商社の役員。


 そして、とある漫画家、ゲーム系を中心に活動していたイラストレーター……。


 私はそのつながりの中で可愛がられていました。イラストレーターの方がレスバーに勤務されてからはそちらで飲ませてもらったり、酔いつぶれた私をライターの人の家に持ち帰られたり(その人は男の人と同棲中でしたので何もないです(笑))、集う人々との話しをしたり、アニメや映画……、いろいろな「好き」を語り合っていました。

 彼女たちから見たら、まだ若い私は小動物的なもので、そんな可愛がりだったかもしれません。それでも私はいろいろなことを教えられ、生き方を学ばせていただき、そして苦い恋愛もありました。


 この中のとある方に「冬寂の子供ができたらすごい可愛いだろうな」と言われたことがあります。私はそれに顔を赤らめて、「そうですね」と答えてました。でも、それは無理だろうと心の片隅に暗く思っていました。あの頃もう私は、普通の恋愛はできないと悟ってましたから。


 ちょっと前に、とある方の訃報を元に、このメンバーの人たちと食事をする機会がありました。ある方はシングルマザーとして娘さんを育て、ある方は親の介護に苦労し、ある方はなろうの作家としてかなりの額を稼いでいると教えてもらいました。

 みんな昔のままでいられませんでした。それでもあの頃と変わらない気軽な会話に、私は「ああ、私はこの人たちに育ててもらったんだ」と、密やかに強く思っていました。


 この『冬寂』の名前を見るたびに、あの頃にあった私の感情が呼び起されます。それはとても複雑なものです。もう戻れない故郷を思う気持ちだったり、沸騰するような恋の感情だったり、すべてをあきらめていたのに、それでも私を温かく受け入れ、いっしょに前を向くように諭してくれた、あのときのやさしさと勇気だったり……。


 私はあと何年生きられるかわかりません。明日いきなりダンプに引かれるかもしれませんし、もしかしたら長生きするかもしれません。でも、あのときの感情が月日とともに薄れてしまうことが、胸が締め付けられるほど苦しく感じます。だから、私はこれを書き残したい、できることなら、多くの人の心に、それが残るように……。


 私の書くものが「やさしい」と感じられたら、それはきっとこの人たちからいただいた「やさしさ」を伝えているからだと思っています。ほかの感情も、きっと全部……。


 そして、私の執筆の原動力はそこしかないのです。だから『冬寂』の名前は、それを表すのにぴったりの名前だと思っています。


 願わくば、あなたの心に春のやさしさを、冬のせつなさを。夏のもどかしさと、秋のはかなさを。冬寂ましろは、過去を想い、それを未来へ続くあなたのために書き続けられたらと思っています。


 こんな恥ずかしい厨二病な人間ですが、これからもぜひよろしくお願いいたします。


〈了〉

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筆名の由来について思う、いくつかのこと 冬寂ましろ @toujakumasiro

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