True End


 彼女は夢の中にいた

 安全で、温かく、幸福な夢

 ひとりの少年がその欠片をぬすんでいった

 彼女は彼に期待した

 夢を現にみせてくれることを期待した


 けれども彼は遠くへ行った


 少年は悪意だったのだろうか


 彼女は失望しようとした

 再び失望しようとした


 その心は悲嘆に熱かった




 涙の数だけ

 差し出さなければならない純粋があった

 夢の世界ではもう

 守りきれない純潔があった


 だから彼女は諦めた

 救いの手のあることを諦めた




 彼女は目を覚ました

 現には

 夢はひとつも残っていない


 彼女は唯ひとりの彼女になった


 救いは待たない

 その足で歩み

 真実を抱く心を取り戻すため


 暗闇の中

 果てのない旅へ




 何故 生まれてきたのだろう

 彼女は無力を思う

 無知を思う


 虚ろなこの身は

 誰のためにもならない


 他者は 生身の人間だった

 彼女と同じように

 他者の存在に苦しみながら生きている


 虚ろなこの身は

 ただ 彼方の苦しみ


 ならば死んでしまえ

 無力な私など死んでしまえ




 真実は

 この身にあって

 おそろしかった


 虚ろであれば

 こわくはない


 もう救いは求めない

 もう夢は必要ない


 誰でもなければ

 真実さえも無力なのだ




 朝は来ない


 そこには呪いがあり

 絶望があり

 彼女は誰でもなかった


 救いなど初めから無かったのだと

 嘯くいつわりの太陽

 白昼夢の闇


 出口は堅く閉ざされた




 彼女は絶望の中にいる

 真白な悪夢の中 傷むからだを見つめつづけた


 ただ不思議だった

 初めは、ただ


 この世で唯一の貴いものを

 どうして彼らはきずつけたのか


 答えがないことが真実であり

 それこそが絶望のすべて


 闇をすっかり汲みとる甕などない

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