第4話
早速本題に入ることにした。青嵐は周りを見渡し、それらしき人影がないことに疑問を呈する。
周りに居たのは一般人だけ。動きを見ればそれは一目瞭然だった。
「そういえば依頼人は? あと護衛して欲しい生物とやらも何処にあるんだ?」
「ああ、それについては……そろそろだろーね」
問いかけに間延びした返事が返ってくる。仕事は速いが、それ以外が地上を歩くカタツムリのように緩慢かつ鈍重だった。
しかし、今回は彼女本人からの回答を求めずとも、問題はなかった。
(この気配……)
青嵐の視線が公園の入口へ向く。それは防衛反応だ。無意識下で彼は己のトラウマとなっている存在を感知し、警戒心を高めた。
青嵐はその気配を知っている。過去に対峙し、激闘の末、辛勝したからこそ片時も忘れはしない。全く同一の気配ではなかったし、規模で言えば天と地ほどの開きがある。
性質そのものは疑う余地もなかったが。
青嵐が風の精霊を操る精霊使いだとすれば、その気配の主は────
「待たせたわね」
炎の精霊を操る、精霊使い。それこそ青嵐を苦しめた術者をも凌駕するほどの手練れ。
但し、精霊使いの才能は年齢を問わない。如何に熟練した精霊使いであっても、生まれながらにして強固な
青嵐の前に現れた精霊使いこそ、正にその象徴とも言える。
齢は十七くらいだろうか。青嵐が大学生くらいだとすれば、学生服という装いからして高校生。年齢詐称狙いのコスプレでもしてなければ、思春期真っ盛りの少女だ。
髪は艶のある黒の長髪であり、ズボラな仲介人の女のように脂ぎった髪質はしておらず、普段から髪のケアを丹念に行なっている成果が出ているのだろう。風で靡かせながら歩く姿はその美貌も相まって男女問わず魅了し、視線を釘付けにする。
しかし、そこは一般人の目線。青嵐が統御する風の精霊が騒めいている。本来は意思を殆ど持たないので有り得ないことだ。
すでに結論は出ているので考えるまでもないが、精霊使いならば超然たる霊視力でその異様性が嫌でも視えてしまう。
(ただそこに居るだけで瘴気を木っ端微塵に消し飛ばしてんな……相当清浄な気の持ち主じゃねえと出来ねえ芸当だ)
少女が一歩踏み出す度、公園内に残存する僅かな瘴気すら消滅する。彼女の間合いの中では不浄はそこに在ることすら許されないのだ。
少女は堂々たる足取りで青嵐の前に立ち、右手を差し出す。その凛とした振る舞いは高校生離れしていた。
「
青嵐は彼女から握手を求められ、一瞬躊躇う。
來花の存在感は人間のそれではなかった。
太陽。空の色を塗り替えてしまうほどの、その場に在るだけで空間そのものが彼女の手に落ちてしまうほどの圧倒的な熱量が、己の矮小さを突きつけられているような錯覚を覚えさせられたからだ。
「……薮鬼青嵐だ」
「貴方が噂の風の精霊使いね。凄腕と聞いているわ。お会い出来て光栄よ」
火山の噴火が比較対象にならないほどの圧は破格だったが、それ以上の体験をごまんとしている青嵐は一呼吸のうちに落ち着きを取り戻す。
「ああ、こちらこそよろしく」
平坦な声で挨拶を返しつつ、少女の手を握るのだった。
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