第2話 裏切り
もう使われていない古いビルの前。そこが敵のアジトだという。そこらへんに多く積まれた段ボールの影に隠れて、ラグイは侵入できる隙を伺う。
「本当ならこんな任務おかしいんだ、俺一人でやらせるなんて。やっぱりこれもボスの……」
「侵入者です!!」
後ろからだれかがラグイを見つけたようで、叫び声が辺りに響く。
「クソがっ!」
ラグイは後ろを振り向き、誰が叫んだかを確認するも、誰もいない。代わりにあったのは、小さなスピーカーだった。
「…だれもいない………ガッ?!」
後ろを振り向いてスピーカーを確認した瞬間、何者かに頭を殴られる。その場にラグイは倒れ込む。
「ボスも粋だぜ。こんなかわい子ちゃんをあんなとこに送り込むなんてなぁ」
豚のように太った禿げた男が金属バッドを落とす。その男の後ろからよく見えないが続々と人が出てくる。
「っ、お、お前ら……」
「ボスの指示でなぁ。お前をマフィアに売るんだってよ」
「ボスが…なんだって…?」
「お前は用済みだ。…でもよかったなぁ。最後にボスに貢献できて」
豚男はラグイに一歩近づいた。ラグイは逃げずにその場に倒れ込んだままでいた。逃げ場なんてないのは理解しきっていた。
「悪く思うなよ。仕事なんだ」
豚男の後ろからは笑い声が聞こえる。聞き覚えのある笑い声だった。かつてお互いの背中を預けた戦友たちだ。
ラグイは視線を下げた。もう、何も、誰の顔も見たくなかった。
目の前から、金属の擦れる音が聞こえる。それだけで身体が強張る。
「やめろ」
それはラグイでも驚くほど、か細く弱々しい声だった。
誰かが肩に触れる。反射的に息が詰り、指先が震える。
ラグイは理解した。
(ああ、これは、殺されるよりずっとタチが悪い)
笑い声に、雨音がかき消されていた。
それにそっと耳を傾けてみる。
(ひどい気分だ)
シネマ〜マフィアに売られた俺は心を殺した男の手を取る〜 空風みゆ @miyu0911
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