第3話
車の中で深呼吸をして少し落ち着いたところで
親方が仕事道具を担いで戻ってきた。
荷物を後ろに積み車の運転席に親方が乗り込むやいなや
僕は尋ねた。
「なんですかあれは?」
親方はタバコに火をつけ
ドリンクホルダーの冷めたコーヒーを一口飲む
「水子や」
「水子ってあの流産した赤子の?」
「形式上わしらはそう呼んでる。
下水管で働いてるとたまにああいうのがでる。
いくら技術が発展しようと浄水場に行くまではただの汚水
糞尿、髪の毛、泥、はたまた血が流れる管のなかにたまにああいうのが混ざ るんや」
「誰かが子供を流したと言うんですか?」
「そんな訳ないやろ
赤子がトイレに流れるかいな
下水に流れたものが底で混ざり合い、絡み合い
地面の下で人のいろんな感情に踏み固められた物が
たまに形となる、それが赤子のような声を出すから水子って呼んでるんじゃ
あれが何なのかは誰もわからん、どこからきてどこにいくのか
1体なのか複数いるのか、増えるのか消えるのか
ただ、触らなければ害はない。
だから声が聞こえたら地上に戻って仕事を辞め帰る
明日になれば通り過ぎてるからいつも通りよ
まぁわしも先人達から聞いただけだけどな
だから今日は、はよ帰って酒でも飲んで眠りな」
親方はタバコの白い煙を吐きながら
ガハハハッと笑う
「そうなんですか・・・」
私はペットボトルの水を一口飲み
未だ震える手を落ち着かせる。
親方は携帯を取り出すと会社に電話をかける
「あっ社長
今日は上がります
なんでって水子ですよ水子
出たんで今日はしまいですわ。」
エンジンをかけ車を出す親方の横で
震えの治まってきた膝を抑えながら
絶対に辞めてやると誓いながら帰った。
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