第2話

狭いマンホールの中を親方を先頭に、ヘッドライトで手元を照らしながら

鉄製の梯子を慎重に降る。


カツ、カツ、カツと二人の足音が空間に反響する。


このじっとりとした暗闇にはまだ慣れない

何か別の世界に入っていくようで背筋がぞわぞわとする。


底に到着する。


「今日はまぁまぁ作業しやすそうだ」


底には2畳ほどのスペースがあり

その真ん中にある人の頭ほどの穴から水が反対の下流方向の穴に流れていく。


作業を始めて30分ほど経った頃でしょうか、

親方にバルブの調整作業を教わっていたんですがね


親方のでかい声に混じってなんか聞こえるんですよ


「そこは丁寧に回せよ」

「ちがう、そこじゃなくて隣のネジを絞めるんだ!」


「すいません」


気のせいかと思ったのですが確かに聞こえる。

足首まで浸かった水の音かと動きを止めても何か聞こえる。


「なに固まってるんだ!終わらんぞ!」


「すいません、でも何か聞こえませんか?」


親方に尋ねる。


「あぁん?」


僕の声を聴き親方がしゃべるのを辞めた


ちょろちょろと配管から流れるでる音と腰のガス検知器の音だけに

なった空間で耳を澄ませる。


ピッピッピ

お・・・

ピッピ

おぎ・・


なんだ?


ピッピッピ

お・・・

おぎ・・

ピッピッピ

おぎゃあおぎゃあおぎゃあ


赤ちゃんだ

赤ちゃんの泣くような声がする


「なんで、赤子のこえが・・・」


「しっ」


呟いた僕の口を親方が塞ぐ


私は何が起こっているのかわからなく

恐怖で顔の血の気が引いていく


親方は膝をつき

ぐっと水の流れ出る配管に顔を近づけ、奥をライトで照らす


「上がりだな」


そうつぶやくと顎で上にあがれと僕に合図をする

震える手足に何とか力を込め

なるだけ早く梯子をよじ登る

あの時ほど梯子が長く感じ見上げた地上の光が恋しく感じたことはない


「まず車もどっとけ」


地上にあがりぜぇぜぇと座り込んでいると

いつもは恐い親方が僕に声をかけ

車の鍵を投げる。


震えた手でキャッチし損ねた鍵を急いで拾い

駆け足で車に戻った。


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