第3話 赤子、魔力を知る
新たな世界、異世界に転生して早くも4か月が経過した。
俺も今では首が据わって寝返りも打てるし、うつぶせで移動することもできるようになった。
やっとのこと自分だけの力で動くことができたのだが、大抵母さんか父さんに抱かれてしまう。
「ううぅぅ、」
「どうしたの?お腹すいた?」
「う!」
俺が声を発したら全部空腹だと勘違いされる。
もう慣れたけど、言葉が発せないのは不便だ。
だが、母さんや父さんに抱かれるのは悪いことばかりじゃない。
一階、そこは二階に部屋がある赤子の俺にとって到達不可能地点。
「きゃっ! もう、エリオちゃん髪ひっぱちゃだめでしょ?」
「あう、あっ、あ!」
「……もう、またあそこ行きたいの?」
「あう!」
"あそこ"とは、俺がこの世界で生き抜く為には必須なものがある場所だ。
「はい、着いたよ〜。」
「やぁ〜!」
「まったくエリオちゃんは誰に似たの?」
母さんに連れて行ってもらい、到着したのは書斎も兼ねた書庫である。
びっしりと本が連なった本棚、自分が小さいと迫力も凄いが、重要なのはそこじゃない。
あった、あれだ。
「あう!あう!」
指を差し、全身を使い要求を表現する。
「ん? これがいいの?」
「う!」
俺では届かない高さにある分厚い本を手に取り、俺の目の前はそっと置く。
「魔法とは」そんな単純なタイトルを表紙に大きく記した本。
開いてみれば論文のような複雑な文字列が連なっている、子供、それも産まれて4か月の人間が読むものではない。
中身が高校生である俺でも確かに難しい。
だが内容が全く理解できないほどではない。フィーリングもあるが、何となくわかるところもある。
そもそも、初めて読む前に懸念していたことが一つあった。
それは言語の問題、俺はゴリゴリの日本人だし他言語なんて英語が少し話せるか怪しいくらいだ。
いきなりの転生、しかも生まれた時から俺の日本人としての人格と記憶があり、この世界の言語を学び始めるには時間がかかりすぎる。
苦労すれば何とかなるかもしれないが、そんなことをしていたら魔法や剣なんてやってる暇がない。
まぁ、ここまで色々考えていたが結果として言語はまさかの日本語だった。
本に記されている文字も話される言葉も、
思い返してみれば、母さんの言葉もわかっていたしな。
でも少し慣れないこともある、日本語の使い方だ。
問題になるほどではないのだが、こっちでは平仮名とカタカナの位置が入れ替わっているらしく、単純に読みにくい。
……慣れるしかないかぁ
「エリオちゃん?そんなの見てもまだわからないでしょ?ほらこっちで遊ぼ~」
「んっ!」
「え~なんでーなんでなんで~!」
言語に問題がないなら良し、体に自由がない今やることは決まった。
駄々こねてる母さんには悪いが、俺に遊んでいる暇はない!
それにしてもこの本面白いんだよ、前世じゃこんな長々とした本は読まなかったのに。
この本には物珍しさと、魔法という要素がひたすら俺を夢中にさせている。
魔法があるなら魔力もある、この本の内容には魔法の行使法は載っていなくとも魔力からなる魔法について細かく記されていた。
魔力、それは人が生まれ持つ概念的な力であり、様々な現象に変換することができる。
ほとんどの人間は10歳になるころに魔力を知覚し、次に鑑定や魔法を使うことで己の適正属性を知る。
……ほうほう。
魔力の知覚、、、属性か、
この世界に魔法があることは知っていた、何となくそうだと理解していた。
でも属性に適正まであるとなると、すべての魔法を極めるみたいな真似は出来ないな。
俺に全属性の適正があったら別なんだろうが、それは後の楽しみにとっておこう。
ひとまず、俺がやることは魔力の知覚だろう。
「エリオちゃん、そろそろお腹すかない?」
「……すぅ」
「エリオちゃん?」
様式なんてものは分からない、でも今持つ知識で代用か惜しいところまで行けるんじゃないだろうか。
息を深く吸い、姿勢を整える。
こういったものに必要なのは、恐らく集中状態の持続。
「エリオちゃ~ん?寝ちゃった?」
「……」
試すのは瞑想、ただ今は本格的な姿勢は出来ない。
(……魔力ってどんなものだろう……)
本によれば、体内をめぐる概念的な力であり世界を構成するものである。
(……空気中に漂っているのだろうか、体内をめぐるってどんな感じだ?)
ひたすらイメージを練り、自分の中で魔力とはなんたるか形作っていく。
「……エリオちゃん、それって、」
(……なんだか、体が熱い、もしかしてこれか?)
最後の踏ん張り所、感じた少しの違和感を忘れないように集中を深めた。
「……むっ!ふんんん!」
「エリオちゃんそれ、魔力なの?」
(キタ!絶対これだ!あと少しっ!)
「……エリオちゃん凄…ってエリオちゃん!?」
(んっ?なに母さん?……あ、)
魔力を感覚的に掴みかけた瞬間、俺は母さんの声で集中が解けてしまった。
……正確には、それだけじゃ無いけど。
「ど、どうしよ?盛大にやったねエリオちゃん」
「……あうぅ」
集中が解けて最初にナニカを感じた部位……お尻が、俺の尻が……
「……とりあえず、洗いに行こっか」
昨日はオムツの偉大さを感じた、排泄物を完全とは言わず吸収してくれるオムツに。
集中の代償か、多分漏らしたのは原因は最後の踏ん張りだ。
踏ん張る場所ミスった……てかオムツ貫通するってどんだけだよ、、、
次からは出してからやろう、うぅ気持ち悪い。
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