第50話仕組まれた舞台裏*
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### **:仕組まれた舞台裏**
日本武道館での『TwinSpark』年越し引退ラストライブの開催が発表され、世間は熱狂に包まれた。クラウドファンディングは目標額を遥かに超え、チケットは瞬殺。テレビ各局の生中継争奪戦も過熱を極めた。
しかし、その裏側は、まさに泥沼だった。
都心にある江藤音楽事務所の専務室。
江藤小百合は、苛立ちを隠せない様子で、電話を耳に押し当てていた。
「…なんですって? 『TwinSpark』のライブが、武道館で許可された? 大晦日に?」
小百合の声は、信じられない、という怒りに震えていた。
武道館は、アーティストにとっての聖地。特に大晦日は、紅白歌合戦の裏番組として、その年のトップアーティストがこぞって開催を狙う、最も重要な日だ。
**当然ながら、その日は、江藤音楽事務所が長年プロデュースしてきた、大物演歌歌手の年越しライブが開催予定だった。**
「どういうことよ! 私が許可したはずないでしょう!?」
小百合は、部下を怒鳴りつけた。
「それが…専務。先方が、**『事務所の意向』**として、あの『TwinSpark』のライブを強行したそうで…」
「事務所の意向? 私の意向に反する、誰の意向だというのよ!」
小百合は、すぐに父である江藤社長に電話を繋いだ。
「パパ! どういうこと!? なんであの女たちが、武道館の大晦日を押さえたのよ!? 私たちの計画が台無しじゃない!」
父・江藤守は、電話の向こうで、深いため息をついた。
「…小百合。あの二人組は、もはや私たちがコントロールできるレベルではない。**世論という、最強の武器を手に入れたのだ**」
「世論?!」
「クラウドファンディングは、目標額の五倍の資金が集まったそうだ。武道館側も、テレビ局も、**『国民が望んでいる』という大義名分**には逆らえなかった。しかも、あの二人は、**『アルバム無料配信』という最強の武器**まで持っている。それに逆らえば、江藤音楽事務所のブランドイメージは地に落ちる」
社長は、冷徹に言い放った。
「あの大物演歌歌手には、**強引にどいてもらった**。彼女には、莫大な違約金と、来年のスペシャル番組の確約で納得させた。それも、全て『TwinSpark』のライブ費用から捻出だ」
小百合の顔が、怒りで真っ赤になった。
自分の手駒だったはずの絵里奈が、自らの計画を狂わせ、父にまで圧力をかけている。
「そんな…! 私が、あの二人に、こんな屈辱を味わわされるなんて…!」
社長は、最後の忠告を告げた。
「小百合。あの二人とは、約束通りにやれ。ラストライブ後、遺書を確実に回収しろ。それ以外は、決して余計な手出しをするな。この件で、これ以上、事務所に泥を塗ることは許さない」
電話が切れる。
小百合は、受話器を叩きつけ、憎悪に満ちた目で、デスクの上のモニターを睨みつけた。
画面には、『TwinSpark』のラストライブ開催を報じる、華やかなニュースが流れている。
(私を、こんな屈辱に陥れるなんて…!)
小百合の唇が、歪んだ笑みを浮かべた。
「…いいわ。望み通り、最高のステージを用意してあげる。その代わり、**あなたたちには、私の描いた通りの『最期』を迎えさせてあげる**」
ラストライブの舞台は、彼女たちの復讐の場であると同時に、小百合が仕掛ける、最後の、そして最も残酷な罠の舞台でもあった。
運命の大晦日まで、あと数日。
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