第17話『共犯者契約』



***


**小説『サスティナブルEmotion』 共犯者契約**


先生はコーヒーの染みが広がるテーブルを睨みつけたまま、ポツリと言った。


「いや……もう、遅いよ」


その冷たい響きに、私の心臓は早鐘を打った。

やっぱり、迷惑だったんだ。こんな危険なことに巻き込んで、これ以上先生を困らせるわけにはいかない。

私は泣きそうな顔で、必死に言葉を絞り出した。


「え……? それじゃあ、書いて頂けないんですか? やっぱり、無理ですよね……」


私がノートを引っ込めようとした時、先生の手がパシッと私の手首を掴んだ。

顔を上げると、そこには不敵な笑みを浮かべた先生がいた。


「違う。そうじゃない」


先生は私の目を見つめたまま、静かに言った。


「君たちが私に相談に来た時点で、もう遅いんだよ」


「え?」


「いい? 君たちがこのノートを見せた時点で、私はもう秘密を知ってしまった『共犯者』だ。もし相手がその事務所なら、ここでの会話だってどこかで漏れているかもしれない」


先生は掴んでいた私の手を離し、腕を組んで背もたれに寄りかかった。


「この依頼を断ったとしても、私はもうターゲットかもしれない。私の作家生命だって危うのよ。……つまり、もう後には引けないところまで来ちゃってるんだよ」


先生はため息交じりに、でも楽しむかのように肩をすくめた。


「毒を食らわば皿まで、ってね。いいでしょう、引き受けましょう」


「せ、先生……!」


私たちが歓声を上げようとしたその時、先生は人差し指をピッと立てて私たちを制した。


「しかし! 条件があるの!」


先生の目が、鋭く光る。


「これは命がけの告発になるかもしれない。途中でどんな圧力がかかっても、最悪の結末になったとしても……何が起きても、恨みっこなしね! いい?」


それは、大人の作家としての、そして共犯者としての覚悟を問う言葉だった。

私と詩織は顔を見合わせ、大きく頷いた。


「「わかりました! ありがとうございます、先生!!」」


こうして私たちは、最強の味方と共に、決して開けてはいけないパンドラの箱を開けることになったのだ。


(続く)


***


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