第15話『隠された第三のメンバー』



***


**小説『サスティナブルEmotion』 隠された第三のメンバー**


先生が「まずい」と言って指差したページ。

そこには、黒いボールペンで縁取られた、ある名前が記されていた。


『元メンバー・沢尻ハルカ。享年20歳』


先生の視線が、私たちを射抜く。

私たちは覚悟を決めて、重い口を開いた。


「……実は、TwinSparkは二人組じゃなかったんです。デビュー前、もう一人、大切な仲間がいました」


「ハルカは……誰よりも努力家で、才能があって。でも、本格的なデビューを目前に控えたある日、早すぎる死を遂げました」


「死因は?」


先生の短く低い問いに、詩織が唇を噛み締めながら答える。


「……不確定です。自宅マンションの庭で倒れているのを、住人が発見して通報しました。事故とも、自死とも断定されていません」


先生は黙ってページをめくる。そこには、震える文字で書き写された『遺書』のような文章があった。


「私たちは……ハルカの部屋から、これを見つけたんです」


そこには、私たちの所属事務所の社長令嬢・江藤小百合による、執拗で陰湿な嫌がらせの事実が綴られていた。

靴を隠される、衣装を切り刻まれる、根も葉もない噂を流される――。

精神を病んでいくハルカの悲痛な叫び。


「許せなかった。でも、相手は社長の娘です。この遺書を公表しようとしても、事務所の力で揉み消される。それどころか、私たちまで……」


私は拳を握りしめ、先生を真っ直ぐに見つめた。


「不確定な要素が多すぎて、警察も動けない。公開できないジレンマの中で、私たちは今日まで笑顔で活動してきました。でも……ハルカのことを、無かったことにしたくないんです」


「先生。お願いです」


私たちは深く頭を下げた。


「先生の手腕で、この事実を……物語という形でもいい、どんな形でもいいから、世の中に拡散してもらえませんか?」


静寂が、部屋を支配した。

これはただのエッセイではない。

一人の少女の死と、巨大な権力への告発状だった。


(続く)


***


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