第13話『原石の輝き』



***


**小説『サスティナブルEmotion』 原石の輝き**


編集者さんに怒られても、私たちは引き下がらなかった。

ここぞとばかりに、持ってきたリュックサックを開ける。


「あの! ぜひ見てほしいものがあるんです!」


私たちは、これまで書き溜めてきた日記帳、スケジュールがびっしり書き込まれた手帳、ネタ出しに使っているボロボロのノートの束を、テーブルの上にどさっと積み上げた。


「これ、私たちがTwinSparkを始めてからの記録なんです。恥ずかしいことも書いてあるんですけど……」


篠原先生は「ふうん」と軽い調子で、一番上にあったキャンパスノートを手に取った。

パラパラ、パラパラ。

最初は退屈しのぎのように、軽い手つきでページをめくっていた先生。


しかし、あるページで手が止まった。


「…………」


スタジオの空気が、ふっと変わった。

先生の瞳孔がきゅっと収縮し、さっきまでの和やかな笑顔が消える。

パラパラとめくる速度が落ち、一枚一枚、文字を追う目が鋭くなっていく。食い入るような、獲物を見つけた猛獣のような目だ。


「……いや、ちょっと」


先生はノートから目を離さずに、低い声で言った。

そして、横に立っていた担当編集者の方をチラリと見た。


「君! ちょっと席を外してもらえるか?」


「はあ!? 何言ってるんですか!?」


編集者さんは目を丸くした。


「えー先生! 原稿! 締め切り! わかってますよね!?」


「わかっていますから。少しだけ、二人と話をさせてくれ。大事なことなんだ」


先生の声には、有無を言わせない迫力があった。

プロの作家が、インスピレーションを受けた時にしか見せない顔。

それに気づいたのか、編集者さんは大きくため息をつき、腕時計を見た。


「……はぁ。わかりましたよ」


編集者さんは、人差し指をピッと立てた。


「10分だけですよ! それ以上は1秒たりともまけませんからね!」


バタン、とドアが閉まる音が響く。

静まり返った部屋で、先生はゆっくりと私たちに向き直った。


(続く)


***

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る