第12話『無茶振りの報酬』



***


**小説『サスティナブルEmotion』 無茶振りの報酬**


サインをもらって大満足……かと思いきや、私たちはまだモジモジしていた。

実は、サインよりももっと大きな、心臓が飛び出るようなお願いを隠し持っていたのだ。


「あの、先生……実はもう一つ、お願いがありまして」


私が意を決して切り出すと、先生はサインペンのキャップを閉めながら「ん?」と顔を上げた。


「実は……私たちのエッセイを、書いて欲しいんです!」


「エッセイ?」


「はい! TwinSparkとしての活動とか、二人の日常とか……先生の言葉で綴ってほしくて! もちろん、無茶振りなのはわかっています! 私たちの事務所も通してないし、完全に個人的な依頼なんですけど……!」


「お金も払えるかわからないし、完全に私たちのワガママなんですけど……でも!」


詩織も横から必死に言葉を継ぐ。

ベストセラー作家に個人的に執筆を依頼するなんて、業界のルールからすれば言語道断。怒られても仕方がない。

私たちはギュッと目をつぶって、断られる言葉を待った。


ところが。


「ああ、それなら大丈夫だよ?」


拍子抜けするほど軽い声が返ってきた。


「え?」


恐る恐る目を開けると、先生はあっけらかんとしていた。


「仕事じゃないんでしょ? お友達として書くなら、構わないよ! 面白そうだし」


「ええええ!? いいんですか!?」


「うん。ちょうど息抜きに何か別のこと書きたいなって思ってたし――」


「ちょっとちょっと先生ーーー!!!」


スタジオの端から、鬼の形相をした担当編集者さんがダッシュで駆け寄ってきた。


「何言ってるんですか! 何を勝手に引き受けてるんですか!?」


「えー、いいじゃん。プライベートだよ?」


「ダメに決まってるでしょう! 今でさえ原稿の山のように抱えてるのに、これ以上仕事を増やしてどうするんですか! 締め切り! 守ってくださいよ!!」


「あちゃー、聞こえてた?」


先生はペロッと舌を出して、私たちの後ろに隠れるように縮こまった。

どうやら私たちの「エッセイ計画」は、先生のスケジュール管理という巨大な壁との戦いになりそうだ。


(続く)


***


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