第11話『最強の悩み事』
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**小説『サスティナブルEmotion』最強の悩み事**
先生に図星を突かれたものの、対談はなんとか進行した。
仕事モードの先生は驚くほど饒舌で、本に込めた想いや、感情との向き合い方について真摯に語ってくれた。
でも、ふとした瞬間にこちらを見て、パチリと片目をつぶってウィンクをしてくる。
『あとで聞くからね』という合図だ。
「――はい、カット! お疲れ様でしたー!」
スタッフの声と共に、張り詰めていた空気が緩む。
先生はすぐさま立ち上がると、私たちの元へスタスタと歩み寄ってきた。
「お疲れ様。いい対談だったね」
「お疲れ様でした! 先生のお話、すごく勉強になりました!」
「で?」
先生はニヤリと笑い、私たちの顔を覗き込んだ。
「さっきの続き。相談? 悩みって何かな? 恋愛相談? それとも人生の岐路?」
先生は腕まくりをして、どんな重い悩みでも受け止める準備万端といった様子だ。
私たちは顔を見合わせ、意を決して背中に隠していた「それ」を取り出した。
「はい! あの……!」
私は震える手で、使い込まれてボロボロになった青い表紙の本を差し出した。
詩織も同じように、自分の本を突き出す。
「私たちの一番の悩みは……先生の本にサインをもらってないことだったんです! お願いします!」
「……へ?」
先生の動きがピタリと止まった。
数秒の沈黙の後。
「ぷっ……!」
先生は吹き出し、お腹を抱えて笑い出した。
「あははは! なんだそれ! 『助けて』って顔してるから、借金の保証人にでもなってくれと言われるかと思ったよ!」
「そんなわけないじゃないですか!」
「私たちにとっては、人生で一番大事なミッションなんです!」
私たちが真剣に訴えれば訴えるほど、先生は涙を拭いながら笑い転げている。
その無防備な笑顔を見て、私たちもつられて笑ってしまった。
「わかった、わかったよ。喜んで」
先生はペンを取り出し、さらさらとサインを書き始めた。
そこには、私たちの名前と、あの日書店で見せてくれたような、太陽みたいな笑顔のマークが添えられていた。
(第1章 完結)
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