第9話待ちわびた逆指名



***


**小説『サスティナブルEmotion』 待ちわびた逆指名**


あの日、嵐のように去っていった篠原先生。

「家へおいで!」という言葉をお守りのように胸に抱いていた私たちだったけれど、現実はそう甘くなかった。


「はぁ……終わんない……」

「動画の編集、あと何本あるんだっけ?」


TwinSparkとしての活動に加え、日々の仕事。私たちもありがたいことに目が回るような忙しさで、カレンダーは黒く塗りつぶされるばかり。

先生もきっと、あの恐ろしい(失礼)アシスタントさんに缶詰にされているに違いない。


「先生、元気かなぁ」

「会いたいねぇ……。あの時の言葉、社交辞令じゃなかったと信じたいけど」


深夜のファミレスで、冷めたコーヒーをすすりながらため息をついた時だった。

私のスマホが震えた。画面には、第1話で相談していた雑誌の記者さんの名前。


『夜分にすみません! 例の対談企画の件で朗報です!』


私は慌てて通話ボタンを押した。


「は、はい! もしかして……?」


『決まりました! 篠原七海先生との対談、正式決定です!』


「本当ですか!?」


『それがですね、実は先生の方から編集部に連絡がありまして……。「TwinSparkの二人となら、ぜひ対談したい。いや、ぜひお願いします!」って、まさかの逆指名が入ったんですよ!』


「えっ……嘘……!」


電話を切った後、私は隣で死んだ魚のような目をしていた詩織の肩を揺さぶった。


「詩織! 起きて! 決まったよ!」

「へ……? 何が?」

「対談! 先生が『あの二人と話したい』って、逆指名してくれたの!」


詩織の目がカッと見開かれた。


「マジで!? 社交辞令じゃなかった!」

「マジ! 私たち、公式に先生に会いに行けるよ!」


「「やったーーーー!!!」」


深夜のファミレスだということも忘れ、私たちは立ち上がって盛大なハイタッチを交わした。

パチーン! という乾いた音が、疲労困憊だった心に火をつける。


次は仕事として、堂々とあの人に会いに行ける。

待っててね、先生!


(続く)


***

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