第8話去り際の招待状



***


**小説『サスティナブルEmotion』 去り際の招待状**


「では、失礼します! 行きますよ先生!」


アシスタントの女性は、私たちにキリッと一礼すると、篠原先生のネイビーのトップスの襟首をガシッと掴んだ。


「ちょ、待って! 待って! 締め切りは守る! 守るから!」

「信用ゼロです! 缶詰ですよ、缶詰!」


抵抗も虚しく、先生はズルズルと書店のバックヤードの方へ引きずられていく。さっきまでのクールなオーラはどこへやら、まるで悪戯が見つかった子供のようだ。


しかし、角を曲がる直前、先生は必死に首を捻って、私たちに向かって叫んだ。


「TwinSparkの二人!」


名前を呼ばれて、私たちはビクッと背筋を伸ばした。


「今度、家へおいで! 改めて、ゆっくりお話しましょう!」


「えっ……!?」


「名刺の連絡先にメールして! 待ってるからーーー!」


「先生、うるさいです!」


ピシャリというアシスタントさんの声と共に、先生の姿は棚の向こうへと消えていった。


あとに残されたのは、嵐が過ぎ去ったような静寂と、私たち二人。

私は手の中にある名刺を、震える手で見つめた。


「ねえ、詩織……」

「うん……」

「『家においで』って、言ったよね?」

「言った。間違いなく言った」


私たちは顔を見合わせると、書店中に響き渡るような声で叫んだ。


「「やったーーーー!!!」」


こうして、私たちの奇跡のような、騒がしい物語が幕を開けたのだった。


(第1章・完)


***

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