第7話秘密の立ち読み
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**小説『サスティナブルEmotion』 秘密の立ち読み**
和やかな空気が流れていたその時、本棚の陰からスーツ姿の女性が血相を変えて飛び出してきた。
「ちょっとちょっと先生!! ここで何油売ってるんですか!」
その女性は、私たちの間に割って入ると、篠原先生の腕をガシッと掴んだ。どうやら担当編集者かアシスタントさんらしい。
「すみませんね、そこのお二人! 先生は今、締め切り前で分刻みのスケジュールなんですから! 優雅にお喋りしてる暇なんてないんです!」
彼女の剣幕に、私たちはたじろいだ。
やっぱり、売れっ子作家さんは忙しいんだ……。申し訳ないことをしたな、と思ったその時、詩織が不思議そうな顔で口を開いた。
「え? でも先生、さっきまであそこの棚で、のんびり立ち読みしてましたよ?」
「……はい?」
アシスタントさんの動きがピタリと止まり、ゆっくりと先生の方を向く。
先生の顔から、サーッと血の気が引いていくのが見えた。
「た、立ち読み……? 取材に行くと仰って出てきましたが……?」
アシスタントさんの目が、眼鏡の奥で光った。
「わーっ! わーっ!」
先生は慌てて人差し指を口元に当て、必死の形相で私たちに向かって「シーッ! シーッ!」とジェスチャーを送ってきた。
「ち、違うんだよ! これは市場調査というか、その……!」
「先生? ……あとで編集部でたっぷりお話聞きますからね」
「ひぃっ」
あのクールでオトコまえな先生が、アシスタントさんの前では借りてきた猫のように縮こまっている。
そのギャップに、私たちは顔を見合わせて吹き出しそうになるのを必死でこらえた。
(続く)
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