第3話『ボーイッシュ』




その時、ふと視界の先に現れた一人の人物に、私たちは釘付けになった。


すっと通った鼻筋に、涼しげな目元。風に揺れる黒髪のショートカット。

ネイビーのトップスに、白のストライプパンツを合わせたその人は、まるでファッション誌から抜け出してきたかのようだった。


「うわあ、見て。背、高くない?」

「スタイル良すぎ…。モデルさんかな」

「ていうか、で、なんかオトコまえじゃない?」


私たちは、本人に聞こえないと信じ込み、言いたい放題に感想を言い合っていた。

すると、その人がふと立ち止まり、こちらをゆっくりと振り返った。

まっすぐな視線が、私たちを射抜く。


「なに? ぼくのことかい?」


低すぎず、高すぎない、心地よい声。

そして、一人称が「ぼく」。


「「うわぁっ…!」」

私たちのヒソヒソ声は、小さな悲鳴に変わった。

「漫画みたい…!」「かっこいい…!」

きゃーきゃーと、二人で顔を見合わせて大興奮。


興奮が最高潮に達した私が、思わず口走ってしまった。

「もし、男の人だったら、絶対結婚しちゃうかも!」


すると、その人は少し困ったように眉を寄せ、小さく首を傾げてこう言った。


「え?……わたし女ですよ」


賑やかだったコンコースの音が、私たちの世界からだけ、すうっと消えていった。

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