第41話 鉄壁の登下校(ガード)は、愛か束縛か

翌朝。僕の家の前には、なぜか朝の7時から凛先輩が立っていた。


「おはよう、佐藤君! 今日は私の担当だ。

さあ、この『護衛用プロテクター』を制服の下に着てくれ!」

「先輩……それ、ただのボクシング用ボディプロテクターですよね。

制服がパンパンで、僕がマッチョに見えます……」


いつ当番を決めたかは分からないが結局、僕は胸板が異常に厚い学生として登校することになった。

道中、女子生徒からの視線を感じるたびに、凛先輩が「あっちに行け! この男には既に見張りがついている!」と威嚇して回る。


「……凛、交代よ」


校門を潜ると、そこには不敵な笑みを浮かべたリサが待っていた。


「ここからは校内監視。佐藤君、あなたのスマートフォンのGPS、私の端末と同期しておいたわ。移動距離が3メートルを超えたらアラートが鳴るから、無駄な動きは慎んでちょうだい」

「リサさん、それ完全にプライバシーの侵害ですよ……」


昼休みになれば、屋上へ呼び出された。

そこには、特製のお弁当を広げた冴さんが一人で座っていた。


「……少年。白バラ女子学園の生徒が、昼休みにフェンス越しに貴方を見に来ているという情報が入ったわ。少し、私の隣で『仲睦まじい姿』を周囲に見せつけなさい。それが最大の抑止力になる」


「冴さんまで何を……。あ、あーんとか、本当に恥ずかしいです!」

「これも、外部の脅威から貴方を守るための『練習』よ。……ほら、口を開けて」


冴さんの指先が少し震えている。

冷徹な命令をしているようで、彼女自身も相当に照れているのが伝わってきて、僕は断りきれなくなってしまう。だが、その様子を物陰からじっと見つめる視線があった。


「……おのれ、姉さん。一歩リードしおって……」

「……凛さん、私たちも負けていられないわね。次の作戦へ移行しましょう」


放課後。駅前のカフェ――ファンレターに指定されていたその場所に僕たちがいた。

もちろん、一人ではない。


「……来たわね。ターゲット、14時方向に確認。

白バラの制服……あれが差出人の女子生徒よ」


リサがインカムに囁く。

僕のテーブルを囲むように、少し離れた席で変装した(全然隠せていない)三人が、鋭い視線を彼女に向けていた。

彼女は、おどおどしながら僕の前の席に座った。


「あ、あの……来てくださって、ありがとうございます。佐藤悠真さん……ですよね?」


「あ、はい……佐藤です」


「私、あの試合を見て……本当に、その……」


その時、背後の席で、凛先輩がコーヒーカップを握りつぶしそうな音を立てた。


「(……言わせん、トドメの告白は言わせんぞ……!)」


冴さんが、手鏡を使って相手の顔色を精密に観察している。


「(……視線、呼吸、瞳孔の開き。……本気ね。これは……強敵だわ)」


リサが、何やら怪しげな妨害電波発信機(?)を机の下で弄っている。


「(……愛の告白が聞こえなくなるよう、周囲の雑音レベルを最大にするわ)」


一触即発。

僕の目の前の少女が勇気を持って口を開こうとしたその瞬間、物語は予想外の方向へと転がり始めた。

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