第3話
「……っあつ!?」
手に持っていたスマホが、突然、火を噴くような異常な熱を帯びた。液晶画面が激しく点滅し、デジタルなノイズが走る。
「なんだ? バッテリーか? 壊れ……」
ヤマトの声が止まる。ライブ配信の画面が、真っ赤な背景に黒い文字という異様なレイアウトに塗り替えられたのだ。
【誰もこの場より離脱すること許さず。】
「おい……なんだよこれ、新手のハッキングか?」
ヤマトの問いかけに応じるように、コメント欄がパニックに染まる。
《まって、スマホが熱くて持てない!》
《アプリが閉じない! ホーム画面に戻れないんだけど!?》
《「登録解除」のボタンが赤くなって点滅してる……。これ、押したらマズいやつだ》
そして、画面中央に血のように不吉なメッセージが表示された。
【現在の登録者数:502,110人】
【登録を棄てし者を『排除』します】
「排除……? 何を言って……」
その瞬間、画面が分割され、複数の「視聴者の自撮り映像」が強制的にライブ配信に割り込んだ。
「あ……が、ぁあああ!!」
映し出されたのは、恐怖のあまり「登録解除」を押し、アプリを強制終了させようとした者たちだった。
一人の男子学生が、泣きながらスマホの電源を切ろうとした瞬間。画面越しに見える彼の背後から、泥にまみれた巨大な「手」が這い出し、彼の頭と腰をガッチリと掴んだ。
「やめて! 嫌だ、助け――」
メリメリメリッ、バキバキバキバキッ!!
信じられない音がマイクを通して6万人の耳に届く。彼の体は、まるで雑巾を絞るように、中央から「逆方向」に捻じり上げられた。
首は180度回転し、背骨は皮膚を突き破って露出し、溢れ出した鮮血が彼の自撮りレンズを真っ赤に染める。
「う、うわあああああああ!!」
ヤマトは腰を抜かし、目の前の虚空に映し出される処刑映像の数々に絶叫した。別の画面では、若い女性が、足首から頭までを「らせん状」にねじ切られ、肉の塊となって崩れ落ちている。
コメント欄は、正気を失った言葉で埋め尽くされた。
《解除した瞬間に殺された! 弟が目の前でねじ切られた!!》
《消せない、消せない消せない!!》
《ヤマト! お前のせいだ! 助けてくれ!!》
「お、俺のせいじゃない……! 俺はただ、DMに来いって言われて……っ!」
ヤマトは震える手でカメラを握りしめた。画面には、死体の山を背景に冷酷な「ルール」が浮かび上がる。
【配信終了まで、登録の解除および視聴の中断は「死」を以て報いる】
ヤマトは理解した。
この廃村で行われる「儀式」は、自分一人の問題ではない。視聴者全員が、無理やり地獄の片道切符を握らされたのだ。
「……ぁ……あ……」
廃村の奥から、さらなる異臭が漂ってきた。
地獄の二幕目が、始まろうとしていた。
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