第2話
霧が立ち込める廃村には、まるで世界から切り離されたような不気味な静寂が漂っていた。
ヤマトは最新のジンバル付きカメラを片手に、足元の腐った木板やひび割れた地蔵を映しながら、軽快なトークを繰り広げる。
「はい、見てくださいよ皆さん。この廃屋の崩れ方、芸術的じゃない? 湿気でカビと腐敗臭が混ざったような匂いが鼻にツンときます。おっと、今の音聞こえた?」
奥の茂みで「カサッ」と乾いた音が響く。
「……あ、今のガチなやつかも。霊の足音? それとも、俺を誘い込んでるのかなぁ」
《ひっ……今の音ヤバい》《ヤマトさん、後ろ! 誰かいた!》《同接6万! 行け行け!》
コメント欄が激しく流れる。ヤマトは内心、それがただの野うさぎか何かの仕業だと確信していたが、視聴者の恐怖を煽るために、わざと怯えたような表情を作ってみせた。墓石を適当に弄り、いくつかの廃屋を冷やかして回ったが、決定的な「絵」は撮れない。
ヤマトは鼻を鳴らし、カメラを自分に向けた。
「……ってことで一通り見て回りましたけど、正直、拍子抜けっすね。DMであんなに煽ってきたから期待してたんだけど、ただの寂れた村。お化け屋敷の方がまだマシだわ。おい、DMの主! 見てるんだろ? 期待外れなんだよ。俺、もう帰るわ。」
ヤマトが背を向けて車に戻ろうとした、その時だった。
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