最強の大魔王の俺、召喚の儀で勇者のテイムモンスターにされちゃって…
@popo4649
第1話 勇者が生まれた日
生物は生まれながらに平等ではない。
それを体現するのがこの俺の存在だ。
俺は膨大な"力"を持って誕生し、
全ての"魔族"を統べる魔王となった。
人間魔族ともども、この世界に
生きとし生けるもの全ては俺のことを
恐怖の象徴と呼ぶ。
これから何百年何千年と世界に君臨し続けると、
そう思っていたのに…
「魔王様、"四騎士"様方がお帰りになられました。
無事に冒険者どもを駆逐してきたとの報告です。」
「そうか、報告ご苦労だった。」
魔王、その名の通り魔族の王、
人類を滅ぼす恐怖の象徴。
人間は俺の名を聞くだけで震え上がる。
そんな俺は人類対魔族の種族間戦争の長として
戦況を把握せねばならない。
一見かったるい仕事のように思えるが、
俺にとっては娯楽だ。
チェスの駒を動かすように兵士を配置し、
盤上を制圧するかの如く戦場を染め上げる、
これが楽しくて仕方がない。
側近からの報告が終わり一息ついていたとき、
突如として俺の玉座の下に
光り輝く魔法陣が顕現した。
「っ!!なんだこれは…!」
即座に立ち上がり離れようとしたが
体が思うように動かない。
四肢の指先が徐々に熱くなっていき、
神々しい光に包まれていく。
(まずい、まずいまずいまずいまずい…!
これはなんの魔法だ。
この魔王バアル=クロウに冷や汗をかかせるか!)
状況を把握する暇なく、
魔法陣から放たれる光が俺を嘲笑うように
部屋中を照らす。
俺は死を悟りそっと目を閉じ最後の時を待つ…
「せめて勇者とくらいは戦ってみたかったな…」
俺のか細い遺言は誰もいない部屋に
静かに響き渡るのだった。
目を覚ますとそこは広々とした空間だった。
高い天井にぶら下がるシャンデリア、
綺麗に磨かれた石造りの壁、
周囲の様子を見たところどこかの城のようだ。
「人型の"使い魔"とは、なかなか珍しいですな。」
「"テイムモンスター"のくせして、
随分と偉そうな立ち振る舞いじゃないか、
気に食わんな。」
そっと下を見下ろすと何人もの人間に
好奇なモノを見るかの如き視線を送られる。
(こいつら、俺が誰であるかわかっているのか…?)
周囲の様子をよく確認すると
大勢の人間が俺を眺めていた。
全身鎧に身を包んだ兵士たち、
玉座に座るいかにも王と言える男、
そして俺のすぐそばには薄い茶髪の小娘がいた。
ガキと呼ぶには成熟し過ぎており
成人と呼ぶには若すぎる。
「この子が私のテイムモンスター…?」
なんなんだこいつらは?
俺のことをやれ使い魔だやれテイムモンスターだ
よくわからない呼称で呼びやがって。
「口の聞き方がなっていないな。
俺を誰だと心得る、
大魔王バアル=クロウだぞ!」
俺が声を荒げると人間どもは
吹き出し、笑い始めた。
(俺は何も間違ったことは言っていないぞ。
腹が立つ連中だな…!)
そんなことを考えていたとき、
太った中年ほどの男が話しかけてきた。
「いやはや、冗談の上手い使い魔であるな。
"勇者"様、こやつはかなりの
上物でございましょう。」
(俺の名乗りを冗談扱いしてきやがった。
こいつら命が惜しくないのか!?)
納得のいかない発言だったが
一つ気になる単語が出てきた。
"勇者"、いつまで経っても現れず、
ついには戦うことなく終わった相手、
そいつが今この場にいるのか…?
俺のその疑問に答えるように小娘が喋り出した。
「そうですね、見た目も
なかなかかっこいいですし。」
「なっ!貴様が勇者だと!?」
勇者とは魔王に対抗できると
される唯一の人間だ。
俺と同様常軌を逸した力を有すると聞く。
その勇者がこんな小娘だと…?
「そうだよ?ほら見てこれ、
勇者であることの証、"天の紋章"。」
小娘が右手の甲を示すとそこには
先ほどの魔法陣の模様と似た紋様があった。
(どういうことだ、さっきの魔法陣は
勇者の力だったというのか?
だとすればこの小娘は俺と同等か
それ以上の力を持っていると…?)
「おい小娘、俺を呼び出したのはお前か?」
俺が尋ねるときょとんとした表情で返した。
「えっ、違うけど…?
私はただ、召喚士さんの手を触れただけで…」
その言葉を聞いて小娘の近くにいた中年の男が
一歩前へ出て礼儀正しく頭を下げてきた。
(召喚士?
この男が俺を呼び出したと?
ダメだ、全く状況が掴めない…)
困惑する俺を差し置いて
王座につく男が語り始めた。
「召喚の儀は済んだ。
勇者様、この魔族は今日以降あなたの下僕だ。
その与えられた力を持って
多くの人々を救ってくれたまえ。」
「救済すべき人々がいれば、頑張りますよ。」
王と勇者は俺を除け者にして話を進めていく。
「勝手に俺を下僕にするな!!
お前もお前で納得するな!!」
俺の言葉は虚しくも人間どもには届かず、
周囲は拍手喝采に包まれた。
人間どもはどこかやる気がないというか、
気だるそうな表情のまま手を叩き続ける。
(何だるそうな顔してんだ!
その顔していいのは俺だけだろ!)
結局何もわからないままに
俺は勇者と呼ばれる少女に手を引かれ
城の外へ出てきてしまった。
ああもう、頭が混乱しすぎて痛くなってきた。
頭の中でもう勘弁してくれ、
という言葉が反芻する中、
勇者が俺に話しかけてきた。
「ねぇねぇ、私たちこれから一緒じゃん?
だから自己紹介しようよ、お互いに。
私は"リリア"、リリア・エヴァンス、
これからよろしくね。」
と言ってリリアと名乗る少女は微笑んだ。
俺は仕方なくもう一度名乗り直す。
「先ほど言った通り、
俺の名前はバアル=クロウ、
魔族を統べる大魔王その人だ。」
俺の自己紹介をリリアは嘲笑いながら一蹴し、
驚愕の一言を俺に浴びせてきた。
「っていう、設定なんでしょ、わかったから。
あなたの本名を教えてよ。」
「本名だ!」
そう答えるとリリアは目を丸くして首を傾げた。
「もしかしてそれ本当なの?
でも魔王バアル=クロウは500年前に
死んだって聞いたし…」
ん?ちょっと待て、
今聞き捨てならないことを吐きやがった。
「俺が死んだ?500年前に?なんの話だ。」
「えっ、魔族なのに知らないの?
言葉の通りだよ、
魔王バアル=クロウは500年前に急死した。
そのおかげで人類と魔族の戦争が
終わったんじゃない。」
どうやらリリアの常識では俺はとっくのとうに
死んだということになっているらしい。
疑問が多すぎる。
つまりはここは俺が統治していた世界の
500年後ということか?
だとしたら俺は今の俺はなんだ?
俺は確かに先ほどまでは
魔王として君臨していた。
わからない、ここがどこで、
俺の身に何が起こったのか…
動揺する俺の気持ちを察してくれたのか、
リリアが優しく俺の背を摩りながら言った。
「とりあえず、私んちに行こう?
あなたのこと、私も気になってきたし、
お家でゆっくり話し合おうよ。」
「あ、ああ。」
俺たちはリリアの家へと足を運ぶ。
「お前の家遠すぎだろ。」
「仕方ないじゃん。
どうせ私は田舎もんですよ〜だ。」
一時間ほど歩かされ到着したのは小さな村、
ここがリリアの生まれ育った故郷だそうだ。
こんな古ぼけた村から勇者が生まれたとは、
世の中何があるかわからないものだな。
「おかえり、リリア。
隣の子が使い魔かい?」
「そうなの!」
リリアが村の婆さんと世間話を始めてしまった。
俺は特にできることがないので待ちぼうけを
食らってしまう。
大体10分ほど待った頃にリリアが戻ってきた。
「お待たせお待たせ、行こっか。」
「…ああ。」
村の中を歩いていく中で様々な人間が
リリアに話しかけてきた。
リリアはこの村の中では人気者なようだ。
「ついたよ、ここが私の家。
さっ、上がって上がって。」
背中を押されるままに俺はその家に入る。
他の家の比べて明らかに綺麗だ。
傷ひとつなく整えられている。
リリアの家庭は裕福なのだろう。
入って早々奥から女が出てきた。
「おかえりなさい、よく頑張ったわね。」
「ただいまお母さん、学校に行ったわけ
じゃないから大丈夫だよ。」
「あなたが使い魔の子?」
「ええっと…」
「そうそう!
私のテイムモンスター、バア…じゃなくて、
クロって言うの。」
「っ!?」
クロだと!?
この俺のことをそんな呼び方で…!
「あらそうなの、リリアをお願いね、
クロちゃん。」
「っ!?」
「…ふふ。」
この大魔王になんたる言い草を、
リリアに関しては吹き出しやがった。
ダメだ、ここでは俺の常識が全く通じない…
「お母さん、私クロとお話しして来るから
ご飯まだ大丈夫〜!」
「えっ、ちょっ…」
俺は手を引かれて部屋に連れ込まれた。
そしてリリアは俺に尋ねてくる。
「あなたは本物の魔王バアル=クロウなの?」
俺は一切の躊躇なく答える。
「ああ。」
「なんで死んだはずのあなたが召喚されたの?」
とリリアは心底意味がわからないとでも
言いたげな顔で聞いてきた。
「そんなこと俺にもわからない。
そもそも死んでないからな。」
俺がそう返すとリリアは自分の机をまさぐりだし
一冊の本を手渡してきた。
「これは?」
「私が通ってた学校の歴史の教科書、
ほら見て。」
そこには確かに、
魔王バアル=クロウは息絶え、
魔王城は制圧されたと書かれている。
「…何を根拠に信じろと?」
「信じなくてもいいけどこれが事実だよ。
500年前に勇者様が魔王城に訪れたとき、
魔王の玉座と骸骨のみが残されていたって。」
魔王の玉座と骸骨…
俺の玉座は一緒に召喚?されたはずだ。
だったらその玉座は一体なんだ?
そして誰の骸骨だ?
謎が深まるばかり、何も答えが見つからない。
「勇者はお前だろ?」
「私は今の勇者ね。」
俺は頭を抱えてしまう。
何もわからない上にお先真っ暗にも程がある。
帰る方法なんてあるのかすら怪しい。
部下との再会は絶望的。
これからどうしたら…
「ねぇねぇ。」
塞ぎ込んでいた俺の服の裾を引っ張りながら
リリアは言った。
「私には、あなたが本物の
大魔王なのかはわからない。
だけどね、召喚の儀で私のテイムモンスターに
なったことには変わりないよ。
無理強いはしないけど、
いく当てがないなら私と一緒に
"冒険者"やってよ。
どんな難題でも二人なら
なんとかなるかもじゃん?」
「はっ、そうかもな…」
(魔王のくせして情けない。
勇者に慰められるなんてな。)
召喚の儀とかいうふざけた儀式のせいで
俺は全てを失った。
これから語られるのはそんな俺とリリアの、
魔王と勇者の冒険譚だ。
俺は魔王。
だが今はただの「ペット」らしい…
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