各国から命を狙われている元スパイです!顔がバレちゃいけない暗殺者の晒し上げ配信始めました

社畜のクマさん

第1話 職場を追放されたスパイ、殺されるまで生配信中

「えー、今緊急で動画を回しています!」

 俺は走りながらスマホで動画を回していた。


 今俺は命を狙われている。理由は俺がスパイを辞めるからだ。


 過酷な日々……それは俺の心身を削ってい……なかった。

 特に疲れもしないし、適した仕事だからこのまま続けようと思っていた。


 だがある日俺は運命の人と出会ってしまった。その人にいつか想いを告げるため、俺は必死に仕事を頑張っていた。

 俺の人生を変えたのは動画配信者:|天川 咲夜≪あまかわ さくや≫さんだ。


 そして運命の日が訪れた。その運命の人のファンミーティングの日……

 俺は重要任務を任された。


 戦争を起こすか起こさないかの命運がかかった重要任務だ。最初は断った。けど「10分だけシフトに入ってくれれば良いから」と悪魔の一言を信じてしまった。

 男が良く言う「何もしないから」と同じようなものだった。


 世界の命運が10分で解決する訳もなかった。任務の為に俺はそのファンミーティングを諦めざるを得なかった。

 任務達成後にせめて1分でも良いから会いに行こうと思った。


 が、任務後は上官命令で一般人との接触を拒絶され、俺は全てに絶望した。

 ので、今回仕事を辞めることにした。


 そうしたら俺は元同僚達に殺されることになった。 

 どうやら俺は使い捨てのコマだったらしい。これまで1000を超える任務を達成してきたのに悲しい。


【ユーザー名:ミドラーシュ 動画接続者・17人】

 まぁ俺は昨日までROM専だったから、この動画を見る人なんていないと思う。


 でも最後に俺は自分の生きた証を何か残したかった。本当は思い人の記憶の片隅に残るだけで良かったのに、それは無理そうだ。


[場所どこだよ?]


 動画にコメントがつく。この際だバラシてしまおう。


「場所はソビュート連邦、外れの街の……」


〈ドン〉〈ダン〉

 銃声が響く。その音に声がかき消された。


[設定オツ。場所ソビュートなのに何で日本語話せるんだよ!]


「俺は日本で生まれ、誘拐されて人体実験されて今スパイをしているから、大体の言葉は話せる」


[銃声リアルだな。動画配信初期からそんな予算を使ってたら、お金尽きますよ?]

 親切な人がいるものだ。俺の心配をしてくれている。


「銃弾は俺が死ぬまで無限に発射されるから、予算は心配しなくて良い。ホイ」

 俺はふと銃弾を素手で掴んだ。それを動画視聴者に見せる。


「多分日本にいたら見ることはないだろうから、これが実物の弾丸な」


[ちょ、何掴んでるの?人間技じゃねぇ]

[タイトル死ぬまで配信にして、この動画視聴者増やしてから死んでくれ]


(ほう、死ぬまで配信か。確かにその方が視聴者が増えそうだ)


「影分身の術」

 俺は追っ手を一旦撒くために影分身の術を使う。


[は?][え?][どうやってんの?]

 鬼の様にコメントが流れてくる。なぜだろうか?


 まぁ良いか。

 動画タイトル『職場を辞めたスパイ、追手に殺されるまで生配信中』


[ワロタ][ちょっと、お前双子?三つ子?][今誰がタイトル変えてる?編集者有能?]


【動画接続者・104人】


「で、視聴者のみんな?何か希望があれば叶えるけど?」


[スパイって言うなら、上司の顔を映して?]


「結構真剣な話になるけど良い?」


[オケ丸水産]


「じゃあ自分の顔は少しの間は映さないよ?」

 こうして俺は視聴者の希望通り上司の顔を映す動画配信を行う事になった。

 真剣モードなので正直他人には見られたくはない。


(とは言ってもだ……)

 俺は基地の出口に向かっている。上司のいる部屋は出口から真逆の方向だ。

 つまりは追手と戦う必要がある。


 さらには視聴者の要望に応えるために、スマホが銃弾に当たり動画が中断されてはならない。


 所謂縛り付きの任務ってやつだ。


 目の前には基地のスパイが大量にいる。銃を構えて今にも俺を殺そうとしている。


[うわリアル][これ本当にどこの現場?][特定班、はやくきてくれぇ]


 もうコメントは見ていなかった。仕事モードだから。

 スマホを縦向きに置く。映ってるかどうかは知らん。


〈ダンッ〉

 俺は地面を蹴る。それと同時にコンクリートの足場に穴が開く。


 俺は沢山のスパイの元に飛び込む。

「眠れ」


 俺はスパイたちの頭に手を置く。脳波を乱して強制的にシャットダウンさせる技だ。

 20人はいたスパイを10秒もたたないうちに一掃した。


[え?][フィクション?現実?][どうやったんだよ?][うぷ主、ホンマ人間?]


「言ったろ?人体実験されたって!俺を悲惨な目に遭わせた国は……」


[わー言うな!][動画を見てる俺達大丈夫か][いやフィクションだろ?バカおつー]

[この動画リアルだし、SNSでバズってるよ!]


 こうして俺は上官のいる部屋に向かう。

【ユーザー名:ミドラーシュ 動画接続者・218765人】


 え、凄い。動画ってこんな伸びることあるのか?ビギナーズラックってやつか?


〈コンコン〉

「|Already done?≪やったか?≫」


「|Of course≪もち≫」


 俺は上官の部屋に入る。それと同時に絶望した表情。

「Why?」


「あ、日本語で話して貰えます?」


「部下達はどうした?そしてなぜ戻ってきた?」


「部下たちは眠ってます。戻ってきた理由は、視聴者さんに上司の顔を見せろって言われたんで」


「は?」

 上司は何を言っているか理解できていないようだった。


「あ、今動画配信してるんすよ。なので上司の顔は中継されてます?」


「え?」

 上司は銃を構え俺に向ける。だが俺は服のボタンを使い、指弾を用いて銃を弾いた。


「国家機密だぞ?なぜ世界に向けて発信している?」


「殺されるなら最後に仕返ししようと思って」


「今すぐ動画を止めろ!」


「いや俺を殺そうとした相手にそう言われても?殺そうとしなきゃバラさなかったのに……」



 上司は何かを悟った表情をした。

「もはやこれまでか……」

 上司は手元のボタンを押した。すると俺の後ろのドアにシャッターが下りてきた。


 俺はヤバい事に気付いた。国家機密をバラすという事の重大さを。

 バレたら全ての証拠を隠滅しなければならない。


「視聴者の皆さん、すいません。生きて帰れたらまた会いましょう!」

 俺は動画を切る。もうこの基地は爆発で消える。


「お前もろとも消してやるさ!」

 上司は言った。恐らく今この基地にはすべての人間を閉じ込める為にシャッターが下ろされているはずだ。

 つまり逃げ場はゼロ。


 ならば逃げ場を作れば良い!

 俺は人体改造された人間だ。超能力を使える様に……


 そして俺の使える能力は『振動』

 つまり俺が尖った鉄を持って、超能力を使えば簡易ドリルが出来上がる。


〈ドドドドド〉

 俺は道を作りながら逃げる準備を。


「一応だけどアンタは死ぬのか?」


「まぁ……貴様を殺せなかった責任は取らねばな。せめて貴様を殺す一縷の望みにかけるさ」



 俺は上司に向かって口を開く。最期くらいはせめて上司に後悔させない為に。

「じゃあな上司。俺がファンミに行く為に休みを与えていればこんな事にはならなかったのに……」


「え、俺そんな下らない理由で責任取って死ぬの?」


 もう俺に上司の声は聞こえていなかった。ファンミを下らない理由だと?

 そんな下らない言葉を言った人間の声など聞くはずないだろう。


 FUCK YOU!!


 こうして俺は何とか基地を抜け出すことに成功したのだった。

 基地から出ると、太陽の光が眩しかった。


「さて視聴者のみんなに安否報告をしなければ……」

 俺はポケットにしまっていたスマホを取り出そうとする。


 あれ?無い?どっかに……落として来ちゃった。

 今戻れば『死』


 俺は諦めることにした。


【ユーザー名:ミドラーシュ チャンネル登録者数:245,812人】

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2026年1月2日 19:15

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